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PADIオープン・ウォーター・ダイバー・コースは、ダイビングを安全に楽しむための基本的な知識とスキルを身につけるコースでした。そのPADIオープン・ウォーター・ダイバー・コースで習った「減圧症」、皆さんは覚えているでしょうか。
この「減圧症」にならないために潜水計画をたてたりするはずですが、残念ながら減圧症になってしまうダイバーは毎年ゼロになりません。逆に、最近は「減圧症」が顕著に見られるといってもよいほどです。
ダイブ・コンピューターは便利なダイビング器材ですが、便利ゆえに「単につけて潜ればよい」的な、理解不足による誤った使い方などによって減圧症が増えているのが現実です。
このコーナーでは「安全ダイビング」を大きなテーマとして減圧症に対する理解を深めていただき、減圧症をはじめとするダイビング事故を未然に防ぐことができるよう、DAN JAPAN DD NETドクターからダイバーの皆さんにアドバイスをしていただきます。


第3回
減圧症の対処方法

第1回めで「減圧症」の解説、2回めで「予防」ついて触れました。
今回は、万一減圧症の疑いがある場合の対処について書かせていただきたいと思います。

 まず緊急性があるかを判断 
ダイビング後に体調の異常が現れたら、まず緊急性があるかどうか、次に減圧症かどうか、といったことを判断しなければなりません。 緊急性はあるけれども減圧症でない場合は、最寄りの救急病院へ搬送します。

チャンバー 緊急性のある減圧症であれば、少々遠方でも、直接、高気圧酸素治療(*1)施設のある病院へ搬送したほうが治癒率は上がります。

減圧症は、症例ごとに重症度に差があり、発症後の進行にいろいろなパターンがあります。
ダイビング終了後3時間以内に発症した減圧症は重症化する可能性が高く、24時間以降に発症した減圧症は急速な悪化をほとんど認めません。
緊急搬送を必要とする減圧症は、傍らから見てぼーっとしている(意識レベルの低下)、言葉がうまく喋れないなどの脳症状がある、歩きづらい/手を動かしづらいなどの運動マヒがある、尿や便が出にくいなどの排泄機能障害がある場合などです。
これらの症状を伴う減圧症は、ただちに治療しないと生命にかかわったり、重症な後遺症が残ることが多いからです。
意識障害や運動マヒは一時的に改善することがありますが、決して放置することなく高気圧酸素治療施設を受診する必要があります。これらの重症な減圧症は脳や脊髄に気泡ができていて、神経や血管が圧迫され酸素不足に陥っています。
大脳はおよそ3分間酸素供給が絶たれると機能が元に戻らなくなりますし、脊髄も40分以上酸素が絶たれると不可逆的な後遺症を残す可能性が高くなります。
これらの中枢神経障害では、いかに早く高気圧酸素治療を受けるかが予後を大きく左右します。
一方、関節痛や筋肉痛など四肢の痛みだけの減圧症は、たとえ激痛であっても重症例として扱われません。発疹や痒みの皮膚症状が出現した減圧症も軽症とされますが、皮膚症状出現後に重症の中枢神経症状を発現することもあるので注意深く観察する必要があります。

 搬送先、搬送手段を決める 
離島では、減圧症が発生した場合、いったん最寄りの診療所で応急処置をしてから高気圧酸素治療施設に搬送したほうがよいのか、ただちに航空機移送したほうがよいのか判断しなければいけないことがあります。

関節痛と筋肉痛の症状しかない減圧症患者を航空機で緊急搬送したところ、死亡してしまったという症例も報告されています。
これは、発症時はいわゆるT型のベンズ(関節痛と筋肉痛)の症状しかなかったが、本来は重症化する減圧症だったため、航空機による搬送中に気圧が低くなり、症状が急激に悪化したものと推測されます。
搬送する際は、ダイブ・プロフィール、発症時期、症状と経緯から、その後の病状変化を慎重に予測しなければいけません。
例えば、トカラ列島、沖縄の離島、小笠原諸島であれば、いったん最寄りの診療所に搬送し、酸素吸入や点滴などの応急処置をしてから航空機で搬送するのが一般的です。
八丈島や神津島であれば、島の診療所に高気圧酸素治療装置がありますから、すぐに治療を受けることができます。
伊豆半島ならドクターヘリを要請することもできます。
減圧症の搬送は、標高800フィート(約244メートル)以下が望ましいとされています。
伊豆半島であれば、陸上でも航空機でも半島の山を越えることは厳しいと思います。
太平洋側を迂回するか、山間部を越えなくてもアクセスできる施設に搬送するかを判断しなければいけません。

 応急手当 
減圧症の応急手当には、水分補給、酸素、点滴があります。
意識があって、嚥下(えんげ:口の中の物を飲み込むこと)に問題がなければ、真水やスポーツドリンクを飲ませます。
減圧症に罹ったダイバーは、血管内にも気泡ができています。気泡は体にとって異物なので、気泡に触れた血液は固まってしまいます。
症状出現後、早期であればあるほど、重症であればあるほど、血流傷害を防ぐために水分補給は重要です。
大気圧下での酸素吸入は、高気圧酸素治療ほど効果を期待できませんが、症状を和らげるのに役立ちます。
中程度の減圧症で、発症直後であれば、20〜30分酸素吸入をしたあたりから症状は軽減し始めます。
酸素流量は10〜15リットル/分以上(*2)が望ましく、リザーバーバッグが付いているマスク(*3)のほうが吸入酸素分圧が上がって効果的です。
デマンド式の吸入器であれば、さらに吸入酸素分圧は上がり、ボンベの酸素消費量も少なく効果的です。医療用酸素は、わが国では医薬品とされているために取り扱いが制限されています。

PADIでは、一般ダイバーでも酸素吸入ができるよう、DAN酸素プロバイダー・コースエマージェンシ・オキシジェン・プロバイダー・スペシャルティ・コースが用意されていますので、ぜひ習得されておくことをお奨めいたします。
点滴は医療施設でしか行なえませんが、目的は経口による水分補給と同じです。
点滴によって血液中の水分を増やし、流れやすくするのです。

 医師に情報提供を 
患者が搬送された医療施設では、緊急性があるかを観ながら診断をつけます。
緊急性のある減圧症であれば、ただちに高気圧酸素治療を開始して詳細な診察は治療中に行ないます。
減圧症以外の緊急性のある病気は、脳や心臓のことが多いので、ただちに画像や血液検査を行ないます。
診断には症状経過とダイブ・プロフィールが重要です。
例えば、潜水深度が浅くて、急浮上直後に胸部症状を伴って意識障害を起こしたようなケースは、減圧症ではなく肺の気圧外傷から生じた動脈ガス塞栓を考えます。
潜水深度が浅く、潜水時間が短いのに安全停止中に運動マヒが生じていれば減圧症以外の病気、例えば脳卒中などを考えます。
医療施設到着後、速やかに診断し、治療を開始するには正確な情報提供が欠かせません。

 迷ったらDANホットライン 
病気の緊急性、搬送先、搬送方法、応急手当がわからないときなどは、DANホットラインに電話をしてください。
DANホットラインは、潜水医学に知識のあるスタッフが初期対応し、必要に応じて医師や事務局が対応するシステムになっています。
DANホットラインはDANジャパン会員のサービスです。ぜひこの機会に入会をご検討ください。




*1
高気圧酸素治療は、高気圧治療装置(別称:チャンバー)の中に入り、圧力をかけ、酸素を吸入し、体内から気泡や窒素を排出させる治療。圧力がかかると体内の気泡は小さくなり、神経や血管の圧迫が取り除かれ、症状が改善する。同時に酸素が取り入れられるため、窒素の排出が促進する。発症初期の高気圧酸素治療は気泡を取り除くことを最大の目的としている。発症後、日数と治療回数とともに、目的は組織の酸素化に変わる。

*2
減圧症以外の救急疾患では、酸素吸入量は多くても4〜5リットル/分。これは、赤血球のヘモグロビンに酸素を付けて体内の酸素不足を補うことを目的としているため。大量に流してもあまり意味がない。一方、減圧症では、酸素流量を多くする必要がある。理由は、体内の窒素排出を目的としているため。肺の中に窒素を取り込まず、酸素だけにしたほうが、血液中と肺内の窒素分圧の圧力勾配が大きくなり、効率的に排出される。

*3
酸素マスクの口元に付いている酸素をためる柔らかいバッグ。息を大きく吸ったとき、リザーバーバッグ内の酸素が補うため、周囲の空気がマスク内に混入せずに、吸入酸素の分圧が低下しにくい。





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