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DANJAPAN

PADIオープン・ウォーター・ダイバー・コースは、ダイビングを安全に楽しむための基本的な知識とスキルを身につけるコースでした。そのPADIオープン・ウォーター・ダイバー・コースで習った「減圧症」、皆さんは覚えているでしょうか。
この「減圧症」にならないために潜水計画をたてたりするはずですが、残念ながら減圧症になってしまうダイバーは毎年ゼロになりません。逆に、最近は「減圧症」が顕著に見られるといってもよいほどです。
ダイブ・コンピューターは便利なダイビング器材ですが、便利ゆえに「単につけて潜ればよい」的な、理解不足による誤った使い方などによって減圧症が増えているのが現実です。
このコーナーでは「安全ダイビング」を大きなテーマとして減圧症に対する理解を深めていただき、減圧症をはじめとするダイビング事故を未然に防ぐことができるよう、DAN JAPAN DD NETドクターからダイバーの皆さんにアドバイスをしていただきます。


第4回(最終回)
減圧症にならないために

今回は減圧症についてのコラムの最終回になります。
最後のこの回では、体調管理の重要性、ゆっくりした浮上速度と安全停止がいかに大切か、最新の医学研究に基づいた減圧症予防の推奨事項を解説し、連載コラムのまとめにしたいと思います。

 体調管理はなぜ大切か 
現在、多くのダイバーがダイブ・コンピューターを持って潜っています。
しかし、依然として減圧症は発症しています。
なぜでしょうか。

数学的なアルゴリズムだけで減圧パターンを算出しただけでは、減圧症は防ぎきれないということです。
皆さんもオープン・ウォーター・ダイバー・コースで学んだと思いますが、減圧症の発症にはさまざまな要因がかかわってきます。
これらの引き金となる生理的要因を考慮しなければ減圧症を予防することはできないのです。

 浮上速度と安全停止が特に大切なわけ 
安全停止 窒素がある組織に半分溶ける時間を表した「半飽和時間」。
皆さんの中には、PADIの上級コースの中でハーフタイムという言葉ですでに学んだ方もいらっしゃるかもしれません。
この「半飽和時間」についてホールデンは体の組織別にコンパートメントを5つに分け、減圧理論を作りました。USネイビーは、このホールデンのモデルに修正を加え、5分、10分、20分、40分、80分、120分の6段階に変更、さらにビュールマンは16段階(4〜635分)に設定しました。
これらの理論はダイブ・コンピューターに利用されてきましたが、それでも減圧症は発症しています。
コンパートメントを増やせば精度は上がり、安全率が高くなったように感じられますが、レジャー・ダイバーにとっては、必ずしもそうではないのです。

例えば、水深30mに20分間潜り、毎分20mの速度で浮上すると、血液(半飽和時間:5分の組織)や脳・脊髄(半飽和時間:10分の組織)は過飽和になり、窒素の排出が追いつかずに過飽和になってしまいます。
もっと浅い水深12mでも、60分間も潜れば血液や神経組織はほぼ飽和に達し、浮上時に気泡が生じてしまいます。
レジャー・ダイバーは潜水時間が短いため、半飽和時間の長い組織(筋肉、関節、骨など)は溶けている窒素が少なく、あまり影響を受けません。
しかし、半飽和時間の短い血液中(静脈中)や中枢神経(特に脊髄)は飽和していますから、浮上速度が少し速いだけで気泡が発生してしまうのです。
また、実際に病院を受診されるレジャー・ダイバーもほとんどは脊髄障害を伴います。

このように、レジャー・ダイバーが減圧症にならないための最大の目標は、飽和してしまった脊髄に気泡を作らないことですから、「浮上速度を超過しない」こと、「安全停止を守る」ことは最重要なのです。

 最新の研究データに基づいた奨励事項 
 浮上速度
浮上 浮上速度は少なくとも18m/分を超さないことが奨励されますが、静脈中を診るエコー検査では、9〜10m/分にすると気泡数はさらに減り、もっと遅い3m/分にすると逆に増加するといったデータがあります。
安全停止は、以前はUSネイビーのダイブテーブルにしたがって水深3mで行なうのが一般的でした。しかし、レジャー・ダイバーでは水深5〜6mで停止したほうが気泡の発生が少なくなることがわかってきました。
停止している時間は少なくとも3〜5分はとってください。10分以上停止してもあまり気泡は減らないことがわかっているので、10分まででよいと考えられます。
浅い深度ほど圧力の変化率は大きいため、ダイビングの最後に行なう停止は非常に重要です。
水深5mから10m/分の速度で浮上すると、水面までは30秒かけないといけないことになります。
安全停止後(水深5〜6mから)の浮上は圧力変化が大きいために浮力のコントロールは難しいと思いますが、水面まで30秒以上かけることが奨励されます。

 ディープストップ
ディープストップ(最大水深のおよそ半分の深度で行なう安全停止)は、水深25mに20分間以上潜った場合、水深15mで2分半行なうことが奨励されます。
1分間くらいの停止では気泡を十分に減らすことはできません。水深20mより浅いダイビングや、逆に深く潜ったとき(水深50m程度)はディープストップを行なうと気泡の発生を増やしてしまう場合もあるので、やらないほうがよいと考えられます。
また、ディープストップはシャローストップ(水深5〜6mで行なう安全停止)の代用にはなりません。

 水深
ホールデンの理論では水深10mまでのダイビングでは減圧症にはならないとされてきました。
しかし、最近の研究では最大深度が6mを超すダイビングでは減圧症が発症する可能性があると言われています。
水深6mを超えるダイビングでは、念のために浮上速度に注意を払ったほうがよいと考えられます。
ダイビングの後半に深い深度に移動したり、1本目より2本目のほうが深いリバースダイビングは、動物実験で減圧症の発症率が高くなるという結果が出ています。深いダイビングを先に行なうフォワードダイビングのほうが安全と考えます。

 運動
運動については、フィットネス向上の意味から、最大心拍数の7割程度(60歳代:約125、40歳代:約120、20歳代:約150)を週に90分間以上、3〜4回に分けて行なうと効果的です。
健康で酸素摂取量の多いダイバーのほうが減圧症になりにくいからです。
ダイビング後24時間以上前は、運動したダイバーのほうがダイビング後の気泡発生が少ないというデータもありますから、比較的激しい運動をしても問題ないと考えます。
ダイビング中の運動は血行を良くし、窒素の溶解を促進するので、避けたほうがよいと考えます。
安全停止中は軽い運動をしたほうが窒素の排出が促進され、リスクが低下します。
ダイビング後の運動は急速に気泡を発生させるので、好ましくありません。

ダイビング後は、強いバルサルバ法(鼻をつまみ、鼻腔内圧を上げて中耳腔に空気を入れる耳抜き法)や、咳、腹部に力を入れるような運動などは避けたほうがよいと考えます。
これらの行為は、胸の中の圧力を上げるので、その行為を止めた瞬間、卵円孔開存(らんえんこうかいぞん:心臓の壁にある隙間・穴/日本人の約3割が持っていて、ほとんど自覚していない)という穴を通じて心臓の右の部屋(右心房)の血液が左の部屋(左心房)に流れ、一緒に静脈内気泡(ダイビング後は減圧症にかからなくてもサイレントバブルが生じています)が動脈に流れるからです。動脈に流れた気泡は、脳などに運ばれて神経障害を起こします。バルサルバ法も軽く優しくするのであれば問題ありません。

 脱水
減圧症のリスクになる脱水は、特に真夏や熱帯地方で注意が必要です。
潜水深度が深ければ深いほど、潜水時間が長ければ長いほど、脱水傾向は強くなります。気温と水温が高いときは、ダイビング前後の水分補給は重要です。
潜水前後で喉の渇きを感じるときは、リスクが高まっていると思ったほうがよいでしょう。

 体温について
ダイビング前のシャワーや入浴は、リスクが減る可能性があります。
しかし、体が温まったまま潜ると、組織への窒素の分配が進むので、平熱に戻るくらいに体が冷えてから潜るべきです。脱水にも気をつけておかなければなりません。
ダイビング中は、あまり体が温まらないほうが窒素の溶解は少なくなると考えられます。
浮上中や安全停止中は、体を冷やさないほうが血流が保たれて窒素の排出がスムースに行なわれます。
ドライスーツは冷えを防止しますが、暑過ぎると窒素の溶解が促進される可能性があるので注意してください。ダイビング終了後は、冷えると窒素の排出が遅れます。水温より気温が低いほど減圧症になりやすいという報告があります。ダイビング後の熱いシャワーやお風呂などの温浴は、気泡を発生しやすくする可能性があるので、控えめにしておいたほうが無難と考えます。

 ダイビング前後の移動
高所移動 ダイビング前の車やボートでの移動は、おそらく誘因にはなりません。
ダイビング前に全身に振動を与えると気泡が生じにくくなったとする研究があります。ダイビング後の振動は気泡を生じやすくさせるので、潜った後のボートの振動はリスクになるかもしれません。
ダイビング後の飛行機への搭乗(キャビン内圧8000ft=2,438m)については、皆さんもオープン・ウォーター・ダイバー・コースで学んだとおり、1日1回のダイビングのときには12時間以上、2回以上潜ったときには18時間以上あけることをDAN(ダイバーズ・アラート・ネットワーク)は奨励しています。
ダイビング後に高所移動を予定している場合(標高400mへの陸上移動を対象にした研究において)は、浮上速度が少なくとも18m/分を超えない、減圧停止を必要とするダイビングを行なわない、安全停止を3〜5分以上行なうことを大前提とし、その上で、高所を通過する時点でのプレッシャーグループ(USネイビーのテーブル)をA〜Cにすることが奨励されます。プレッシャーグループが若い(Aに近い)ほど減圧症の発症は少なく、A〜Cのダイバーであればほとんど減圧症にならないからです。
A〜Cにする手段は、潜水深度と潜水時間を控えめにするか、ダイビング後に時間をあけて高所移動するかです。

 さいごに 
このコラムを通じて4回にわたって減圧症について解説させていただきました。

病院を受診されるダイバーの方に
「知っていれば減圧症にならなかったのに」
と言われることがありますが、そのような患者さんに後遺症が残るようなことがあると、特に残念な思いがします。

最初にも書きましたが、減圧症については人それぞれで生理的要因が異なるものです。
ダイブ・コンピューターを持っていれば大丈夫、インストラクターや水中ガイドに任せておけば大丈夫と、まるっきりアテにするのは問題です。
ダイブ・コンピューターやインストラクターからの情報は基本的なもので、そこにあなたの個人的要因を追加し、自分でしっかりと判断してください。

また、DANへの入会もぜひご検討ください。
病気の緊急性、搬送先、搬送方法、応急手当がわからないときなどは、DANホットラインに電話をしてください。
DANホットラインは、潜水医学に知識のあるスタッフが初期対応し、必要に応じて医師や事務局が対応するシステムになっています。
DANホットラインはDANジャパン会員のサービスです。ぜひこの機会にご検討ください。

減圧症の予防について、ダイバーみんなで知識を共有し、楽しくダイビングを続けていただきたいと思います。





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