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魚観察テクニック

第2回 オスとメスを見分ける 〜 カワハギとネンブツダイ

PADIジャパン/大阪オフィスの西川です。
前回はサカナを観察するときの浮力状態がテーマでしたが、今回は同じ浮力でもサカナを撮影するときのことを考えていきましょう。
ダイバーは環境に対するダメージや疲労軽減を考慮して、いつどんなときでも中性浮力でいるべきと、私は思っています。
マイナス浮力が必要なのは、スクーバ器材やウエイトを脱着するときくらいですね。
スキルの練習をする際、エア切れスキルをマイナス浮力で練習しますか?
もし万一エア切れになってしまうときがあるならば、それは中層です。決して水底ではありませんね。
私もインストラクターの端くれ、水底でエア切れスキルの練習をしている人を見かけると、「その状態で本当に水面にたどり着けるの?」と思ってしまいます。
写真を撮影するときも例外ではなく、中性浮力でいるべきですよね。

文:西川 守(PADIジャパン/大阪オフィス)   イラスト:ともなが たろ

一昔前とずいぶん変わった水中写真事情
私がPADIジャパンに入る前、まだ現場でインストラクターをしている頃は、水中カメラといえば「ニコノス」でした。ワイドレンズをつけ、背景には海の青いグラデーションで、遠近感の出る画が当時の水中写真撮影の主体でした。
ニコノスをメインで使っていたころのPADI U/Wフォトグラファー・スペシャルティでは、前述のような構図はマイナス浮力で下から上向きに撮影をするように教えていました。
そして、できあがった写真はポジからダイレクトプリントで引き伸ばし、額に入れて楽しんでいたものです。
現在では水中写真もフィルムカメラからデジタルカメラに移行し、ワイドレンズも少なくなってきたことから、随分と楽しみ方も変わってきたと思います。
芸術性で構図を考えるというよりも、水中で出会ったものをスナップ写真としてどんどん記録していく。小さなものもマクロで綺麗に撮影でき、失敗してもすぐに消去できる。ログブックを書きながらバディとデジカメで撮影した画像を見せ合い、気に入ったものがあれば、後日Eメールに添付してやりとりする、そんな感じではないでしょうか。

フィッシュ・ウォッチングとデジタルカメラ
フィッシュ・ウォッチングでのデジカメ使用は前回でも少しだけ触れましたが、今や魚種の同定や生態の記録には欠かせないものとなりました。
背景の選択や構図よりも、写っているサカナが誰で、何をしているところかが大切です。
極端に言えば、少々ブレていようが、尾ビレがフレームから切れてようが、繁殖活動や食餌活動の決定的シーンが撮影できていれば大成功ですよね。
決してレア物ではなくても、よい被写体になってくれます。
インストラクターは、写真の出来・不出来よりも、一枚の写真からどのような情報が読み取れるのかを解説してくれるはずです。
今回のテーマの「オスとメスの見分け」などは、デジカメ使用のコースやツアーのテーマとしても楽しく演出してくれるでしょう。
そして、サカナの生態観察をしながら記録していくワケですから、ダイバーとしてはやはり中性浮力をとって環境に同化していることが第一条件と思います。
ホバリングでの撮影は少々きついかもしれませんが、少し練習していただければフィンの先端や片手の指先をダメージの出にくい接地ポイントに置いて、中性浮力で撮影していただくことはそんなに難しくないでしょう。
マクロの構図やピント合わせを液晶のディスプレイを見ながら呼吸のトリミングで微調整する、という練習も、インストラクターはピーク・パフォーマンス・ボイヤンシーSPやフォトSPの課題として設定してくれるかもしれません。

オスとメスの見分け
オスとメスは、単に見分けるだけでなく、見分けた上で感情移入をして楽しむのもよいと思います。
少しの前情報を知っているだけで、遺伝子を次世代に伝えるオスと、実体を次世代に残すメスとが繰り広げるドラマがそこらじゅうで観察できます。
最初はベラやブダイの仲間のように、外観ですぐに判断できるものから始めるとよいでしょう。
キュウセンなどはメスからオスに性転換し、その中間個体(私的にはオカマちゃんと呼んでいます)も発見できます。
求愛から保育までの繁殖行動の観察もオスとメスの見分けから始まります。
少し興味がわいてきたら、普段はオスとメスの見分けがつかないのに、繁殖時期には何か特徴が現れてきたり、行動によって予想できるものも対象に加えてみましょう。
今回はその例としてカワハギとネンブツダイをご紹介します。

カワハギ カワハギ
カワハギは外見からオスとメスはほとんど見分けがつきません。
しかし、成熟したオスは第2背ビレ前部が糸状に伸びてきます(第1背ビレは目の上の引き金みたいな固いトゲで、その後ろが第2背ビレです)。
ただし、この特徴は幼魚の段階では見られず、また、仲間につつかれてちぎれてしまっている個体もあります。
ですので、この「第2背ビレの前部が糸状に伸びているかどうか」だけではオスとメスを見分ける決め手になりにくいのですが、この特徴を確認できれば、その個体は間違いなくオスです。
ここから先は感情移入になってしまいますが、数センチの糸が私には雄ライオンのタテガミのように見えてしょうがありません。
おもしろいことに、このオスのシンボルのような(注意:正式な用語ではありません)特徴は、大きくて強そうな個体ほど、太くて長く伸びてきます。
そしてそれにつれてメスや他のオスに対する態度が横柄になってきます。
夏場にかけてペアを組んでくる時期に、タテガミを振りたてながら相手のメスやテリトリーに近づいてくるオスを追い掛け回しているオスの姿を見かけると、「亭主関白で口うるさいカワハギ親父」とつい思ってしまい、マスクの中でニヤニヤしてしまいます。

ネンブツダイ ネンブツダイ
ネンブツダイには、クロホシイシモチ、オオスジイシモチ、キンセンイシモチなど仲間が多く、伊豆から沖縄までのほとんどのダイビング・ポイントで当たり前のように見ることができます。
この仲間は群れている幼魚も綺麗ですが、夏場にかけてメスが生んだ卵をオスが口の中で保育する様子も見ごたえがあります。
オスとメスは外観からは判別しにくいですが、行動ですぐに予想ができるタイプです。
オスは口の中での保育をする随分前から、喉元を膨らませています。
例えばネンブツダイでは、7月頃から始まる産卵期の1ヶ月以上前からペアになります。
喉を膨らませたオスはメスの下に回りこみ、肛門あたりで口をパクパクさせている姿を見かけるようになります。
これは、来るべき産卵期に向けて練習しているかのように見えます。こんな感じで、感情移入したくなっちゃいますよね。
実際に口の中での保育中は、口元やエラ側から卵が見えたり、呼吸(口をパクパクしている)が早くなったりして見分けがつきますから、じっと見つめていると喉元の卵が透けて見えるかもしれません。
透けている卵の色がオレンジ色から10日ほどで黒っぽい銀色に変わっていく様子も楽しめます。
海に通い詰めて、よく観察するととても楽しいです。

カワハギとネンブツダイのいいところ
今回、カワハギとネンブツダイに登場してもらったのは、いるところに潜れば必ず会えるということが最大の理由です。
潜ったけれどもいなかった、ではツラいですからね。
それから、カワハギは結構我々の周りをウロウロし、ネンブツダイは壁面や岩のくぼみにホバリングしていて、どちらも中性浮力状態でないと撮影しにくいと思われる魚種を選んでみました。
背景や構図は気にせず、ピンボケでもがっかりせずに、芸術写真としてではなく生態写真としてその価値を見出してみましょう。
また、撮影の際は、くれぐれも浮力のコントロールに注意を払うことを忘れないでくださいね。




西川 守(にしかわ まもる)

PADIジャパン/大阪オフィスのスタッフ。
とにかく魚が大好きで、いつもダイバー、釣師、魚屋さん、料理人のそれぞれの視点で魚を観察できる。
おかげで、いわゆるレアものより普通の温帯にいる魚が得意。
大の魚好きなことが高じて、オリジナルのPADIスペシャルティ「サカナとの遊び方SP」を作ってしまう。
これまでに、白崎海洋公園、串本、越前、牟岐、大分、佐世保、上五島で、この「サカナとの遊び方SP」のイベントを開催。
TVチャンピオン(テレビ東京系/現在は放送を終了)でお刺身を食べて魚種を当てるさかなクンを見て感動するが、いつの間にかそれが自分の得意技にもなってしまう。
「生まれ変わったら伊豆大島の波浮港の水底で、つぶらな緑色のひとみで 仲間とひしめき合って水面を見上げているハオコゼになりたい」と常々思っている。


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