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Scene 4 : マンタ、歓喜の饗宴

南北に細長く連なる島国モルディブ。この国に属するハニファル島はインド南岸から700キロほど沖合のインド洋に浮かぶ無人島だ。上空から見ても、とりわけ特徴的なものは何もない。トラック1台分ほどの砂の上に、熱帯性の低木がまばらに生えているだけで、10分もあれば、子供でさえ、その海岸線を踏破できるだろう。  

だが、この島にはほかの島と違う点がある。年に数回、季節と潮の干満が条件を満たした時、モルディブ全域からマンタが集まり、バレエでも踊るかのように、食事をするのだ。

季節は5月から11月。インド洋のモンスーン海流が潮の干満で押し戻されると、その反動で深海の水が吸い上げられ、オキアミをはじめとするプランクトンが海面近くに運ばれてくる。その後、プランクトンは海流によってハニファル湾内へと追い込まれる。湾内の海水は大量のプランクトンでくもって見えるほどになる。

そこに登場するのが、マンタだ。「満潮の直後、まず、数匹が現れます」と話すのは、モルディブのマンタを調査し続けている英国の海洋生物学者、ガイ・スティーブンス。「でも、勢ぞろいするまでに時間はかかりませんよ。サッカー場ほどの広さしかない湾に200匹ものマンタが集まって、数時間も食事を続けるんです」

モルディブに生息するマンタは、胸びれの端から端までが最大で3.5メートルにもなる。餌はオキアミなどのプランクトンで、食事の様子はダイナミックそのものだ。プランクトンの群れを見つけると、四角い大きな口を開けたまま突っ込み、海水もろとも吸い込む。そして、鰓を使ってプランクトンだけを濾し取るのだ。プランクトンが密集した場所では、旋回したり宙返りしたりして何度も餌の群れに突っ込んでいくし、数十匹、時には数百匹もの マンタが代わる代わるに餌を吸い込んでいく。

狭いハニファル湾では、マンタも技に磨きをかける必要があるようだ。スティーブンスは、研究者たちがめったに観察したことのない、ある行動を目撃した。50匹を超すマンタが連なって食事をしていた時、先頭のマンタが最後尾のマンタの後につき、らせんを描くように泳ぎ出したのだ。「サイクロン型採餌と呼んでいます」とスティーブンス。「100匹を超えると、円は大きくなりすぎて崩れます。"食卓"は大混乱ですね」

整然とした"饗宴の舞い"は、何百匹ものマンタが体をぶつけ合う乱闘へと一変するのだ。

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インド洋の青い海で、イワシの群れに囲まれながら、プランクトンを捕食するマンタ。
(Thomas Peschak/National Geographic)

>>関連写真(ナショナル ジオグラフィック特集フォトギャラリー)

(『ナショナル ジオグラフィック日本版』2009年10月号特集「マンタ 歓喜の饗宴」より)

phナショナル ジオグラフィック日本版 2009年10月号

特集「マンタ 歓喜の饗宴」のほか「巨木の森と生きる」「知られざるサハラ」「揺れるインドネシア」などを掲載。

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