2014年5月から、各地のダイブサイトで撮りたい水中写真をピックアップして、その撮影手法について解説&紹介していく企画がスタートした。一年を通していろいろなダイブサイトへ撮影に行くが、それぞれのポイントで様々な水中撮影の楽しさに出会う。その時々に感じた気持ちを作品にしながら、いかに簡単に楽しく撮影するにはどうしたら良いか?といった観点で話を進めていきたい。
今回は本州中南部に位置する南紀・串本の1枚を紹介する。串本の海は、ワイドからマクロまで幅広い要求に応えられる、パフォーマンスに優れたダイブサイトだ。講演会やセミナーなどで年に数回訪れるが、気持ちのよい海である。今回は小さなコンパクトデジタルカメラとその防水ケースのみの気軽・手軽な撮影システムでチャレンジした。透明度は15m程度、比較的抜けている状況であるが、内蔵フラッシュを使った撮影では、浮遊物にフラッシュ光が当たり乱反射して起こるマリンスノーが多発する。外部フラッシュからの照射にすれば全く問題ないのだが、なんとか内蔵フラッシュのみできれいに撮りたい衝動に駆られた。
真っ赤になるハタを濃いめのブルーバックに!これを高性能コンパクトデジタルカメラで狙ってみた。
撮影モードを水中ワイドに選択した場合は、フラッシュは強制発光にセットされる。
内蔵フラッシュのみで外部フラッシュを使っていない場合は、浮遊している砂やゴミにフラッシュ光が乱反射して、雪が舞ったような写真になってしまう場合がある。浮遊物の多い海況では仕方がないことだが、極力このマリンスノーを少ない状態できれいに撮影したい。
フラッシュOFFの状態で撮影すればマリンスノーは発生しないが、このハタが住む水深は-20m付近。濁りがひどい場合には、日中でも暗くなる程水面からの光に乏しい状況になる。この環境では水中ホワイトバランスと高感度で被写体の発色を鮮やかに再現することは難しい。
TG3の内蔵フラッシュは、カメラを正面から見て右上に位置する。フラッシュ光をブルーの海の部分に位置させて撮影するより(写真右)、下側の岩の部分に位置させて撮影した方(写真左)がマリンスノーが目立たない。つまりこの縦位置撮影では、右手が上になるように構えると、フラッシュ窓がカメラ下側になる。
この写真は、被写体から離れた位置からズームを望遠側いっぱいにセットして拡大して撮影した例。被写体までの距離があると、被写体を脅かさずに済むので撮影はしやすいが、水というノイズの層が厚くなるのでクリアに写らない。撮りやすさをとるか?画質をとるか?のトレードオフ。
雪が降ったようなノイズだらけの写真No.2
砂や泥を巻き上げていない場合でも、浮遊物が元々多い海域では、マリンスノーが発生しやすい。フラッシュを止めて自然光撮影で切り抜ける方法もあるが、フラッシュを使って発色を良くしたい場合もある。
その場合の対策にフラッシュの微少発光がある。ものすごく弱い光を当てて発色をキープさせ、足りない光量は感度アップでまかなう手法だ。とはいえ、コンパクトデジタルカメラでは、フラッシュの発光量を微調整させる機能を搭載していない機種がほとんどだ。
ただし、奥の手もある。内蔵フラッシュを微少発光させて浮遊物のノイズを軽減させる方法。元々は外部フラッシュを同調させるためのトリガー信号用だ。メニューからスレーブモードが使えるようにセットアップしておく。通常のTTLとスレーブをワンタッチで切り替えることが可能だ。
●水中ワイドモードで十時キー→フラッシュ→スレーブ
●メニュー→アクセサリー→リモートフラッシュ→スレーブ
清水 淳 Profile