身近なおサカナの魚眼レポート 〜 第5回 カサゴとウッカリカサゴ

身近なおサカナの魚眼レポート

-第5回- カサゴとウッカリカサゴ

こんにちは PADI大阪オフィスの西川です。 今回から新シリーズのおサカナ連載コラムを始めることになりました。これまでも身近で地味なおサカナネタにお付き合いいただきましたが、今回からのコラムも、話題のレア物は最前線のガイドの皆様にお任せして、私はよりディープに、地味なおサカナをじっくり見つめていきたいと思います。

その中で、一番多くの人と話題に上がったのが「カサゴとメバルについて」でした。どちらも10年を経て最新情報が変わっています。ここでもう一度、カサゴとメバルについて詳しくお話しておきたいと思います。

昨年コラムに掲載した「魚観察テクニック」は、実は2005年にPADIメンバー向けの会報に掲載されたもののリライトです。その第1回でもメバルとカサゴを取り上げ、両者の空間認識や捕食によるアゴの形状の違いなどに触れていますが、なんといってもカサゴとウッカリカサゴの見分け方についてが一番ウケがよかったのです。そのあたりをもう一度このコラムで徹底的に掘り下げてみます。

カサゴはもともと日本人にとって、とてもなじみの深いサカナでした。ところが、1978年ソ連の学術誌に、バルスコフとチェンにより「日本産の深場にいる大きな赤みのきついカサゴは新種である」と記載されました。そして、1979年には阿部宗明(ときはる)博士により、「ウッカリしていると間違う」という意味と、出し抜かれた日本人研究者への戒めの意味も含めて、ウッカリカサゴと和名提唱されたそうです。

もともと、漁業関係者、釣り人、仲買人などが、深場にいて大きくなるカサゴを昔からカンコ、アンポンタン、オキガシラ、オキアラカブなどと称して区別していたにもかかわらず、魚類学者が見落としていたことへの戒めでしょうか。 ただし、当時は「大きな赤い個体がウッカリカサゴである」という以外、見分け方が不明でした。

そして、1999年の西海区水産試験所の研究発表で、「側線付近に白班があって、その白班に濃い縁取りがあればウッカリカサゴ」、「白班がないか、あっても縁取りがなければカサゴ」とDNA鑑定であきらかになりました。

余談ですが、こういったそっくりさんを見分けるピンポイントを一度知った後は、それこそ目からウロコが落ちたように、フィッシュウォチングがとっても楽しくなります。カンパチの尾ビレ下葉の先が白いこと、マダイの尾ビレは黒く縁取られていること、ギンガメアジはエラブタに黒点があることなど、いつかこのコラムで一挙にリストアップしたいと思っています。

ちなみに、今でも自分の手元には2005年当時のともながさんのイラストがあるのですが、実はそのイラストにボールペンで落書きをしてしまっています。つまり、胸部側線付近の白班に縁取りを書けば、簡単にウッカリカサゴのイラストになってしまうのです。

ウッカリカサゴの市場での評価は厳しく、「カサゴより美味しくない」とレッテルを貼られ、安く取り引きされているので、関係者が間違うことはありません。親しい漁師に聞くと、カサゴを出荷する際に一尾でもウッカリカサゴが混じっていると、トロ箱全体がウッカリカサゴとして安価に扱われてしまうそうです。

このように、実物を陸上で見たり、手にとってみたりしたときの見分けはほぼ完璧になったのですが、ダイビングではそうは簡単にはいきません。

もともと、漁業や釣りの世界では、ウッカリカサゴは40m以深から20cm以上ある魚体のものが漁獲されています。40m以深にもカサゴはいて混獲されますが、この両者は班紋で簡単に見分けがつくのです。

問題はウッカリカサゴの幼魚が深場から漁獲されないことです。 当然、ダイバーとしては「自分達のフィールド(浅場)にウッカリカサゴの幼魚がカサゴに混じって存在しているのでは?」と予想しました。自分などは「サカナとの遊び方」イベントで「ウッカリカサゴを探そう!」と称して、たくさんのカサゴの斑紋写真を見てきました。しかし、どれも深場の個体ほど決定的とは言えないのです。

ところが、2011年7月、久しぶりに越前で行なわれた「サカナとの遊び方」イベントで、大きな発見がありました。 標本としてのカサゴとウッカリカサゴにはもう一つ見分けるポイントがあります。それは胸ビレの軟条数がカサゴで17か18、ウッカリカサゴで19がほとんどで、班紋とあわせてほぼ完璧に見分けられるのです (今まで西川家でもらったり買ったり釣ったりした何百というカサゴの胸ビレ軟条を数えなかった事は皆無ですが、斑紋と両方をみることにより、正確に同定できるようになりました)。

そのイベントで、一本目終了時に見せていただいたカサゴのクローズアップ写真では、なんと!胸ビレ軟条まで数えることができたのです。おかげで、少しウッカリっぽい特徴があるものの、カサゴと写真同定することができました。知らない間にデジカメの性能はそこまで進歩していたのでした。マクロが得意な皆さんは、ぜひ一度挑戦してみてください。両端の短い軟条を見落とさないようにするのがコツです。

比べてみよう!
↓クリックすると画像が大きくなります↓

写真提供/《SUNS》坂本涼子さん

写真提供/《1.DIVE》石垣しのぶさん
胸ビレ軟条は両端に細くて短いのがあるので、その間の長いものを根元付近で数えましょう。拡大して少しぐらい画像が荒くても、鰭膜(軟条と軟条の間の膜)は透明なので、まだら模様がある棒状の本数を数えればOKです。16+2で18ならカサゴ、17+2で19ならウッカリカサゴと判断して斑紋と比較してください。それより少なければもともと判別不能ですし、多いことはまずありません。ちなみに、右の写真がカサゴ、左の写真がウッカリカサゴです。

これで、積年のナゾが一気に解決できれば、とワクワクするとともに、今までカサゴかウッカリか、と一緒に悩んでいただいた皆様と、最新情報を共有したい気持ちでいっぱいです。

次回はメバルについてお話します。

筆者プロフィ-ル

西川 守(にしかわ まもる)
PADIジャパン/大阪オフィスのスタッフ。
とにかく魚が大好きで、いつもダイバー、釣師、魚屋さん、料理人のそれぞれの視点で魚を観察できる。 おかげで、いわゆるレアものより普通の温帯にいる魚が得意。 大の魚好きなことが高じて、オリジナルのPADIスペシャルティ「サカナとの遊び方SP」を作ってしまう。これまでに、白崎海洋公園、串本、越前、牟岐、大分、佐世保、上五島で、この「サカナとの遊び方SP」のイベントを開催。TVチャンピオン(テレビ東京系/現在は放送を終了)でお刺身を食べて魚種を当てるさかなクンを見て感動するが、いつの間にかそれが自分の得意技にもなってしまう。「生まれ変わったら伊豆大島の波浮港の水底で、つぶらな緑色のひとみで 仲間とひしめき合って水面を見上げているハオコゼになりたい」と常々思っている。

イラスト

友永 たろ(ともなが たろ)
イラストレーター。主に キャラクター製作、児童書イラストを描く。
魚や水生生物が大好きで、独特のタッチで描かれる魚たちのイラストはいろいろなところで目にかかることも多い。
最近ではFlashでムービー作成にはまっている。
ホームページ「ぼくのすいぞくかん(http://boku-sui.net)でイラスト&Flashムービー公開中。

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