身近なおサカナの魚眼レポート 〜 第8回 カンパチとヒレナガカンパチ

身近なおサカナの魚眼レポート

-第8回- カンパチとヒレナガカンパチ

カンパチとヒレナガカンパチの見分け方

前回はブリとヒラマサの見分け方をダイバーの目線で挑戦する、という内容でした。それに比べて、カンパチとヒレナガカンパチの見分け方はとっても簡単です。

ヒレの長さは個体差が大きいので、尾ビレの下葉の先端が白ければカンパチ、白くなければヒレナガカンパチです。カンパチも幼魚の間は尾ビレの下葉の先端が白くなりませんが、40cmくらいから白くなります。どちらも腹ビレ、尻ビレの先端は白いので、ダイビングで見かけたときはヒレナガカンパチは2つ、カンパチは3つ体の下のほうで妖しく光る輝点(ブリップ)が目立っています。50cmぐらいの群れではよく一緒に泳いでいて、水中でも見分けられますし、写真を撮っておけば後で写真判定も可能です。

もともとカンパチやヒレナガカンパチはダイビングで遭遇する機会が多いように思います。どちらかというと偶然通りかかったというのではなく、向こうから様子を見にやってきた、という現れ方が多くないですか? ダイバーの出す気泡が小魚の群れに似ているのでしょうか。ガイドさんの中にはカンパチを呼び寄せる特技をお持ちな方がいらっしゃいますが、いずれも泡と音を使うようです。ぜひ、見分けに挑戦してみてください。

ブリとヒラマサ、カンパチとヒレナガカンパチの関係

前回もブリとヒラマサの分布には少し触れました。ヒラマサは世界中の暖海に生息し、ブリは日本近海の固有種です。黒潮や親潮に乗ってヒラマサのひとつの系群が分かれて進化したと想像できると思いますし、そこから見分け方を考えるとおもしろいと思っています。

では、カンパチとヒレナガカンパチの分布はどうでしょう? これはどちらも世界中の暖海に広く生息しているとされますが、カンパチのほうが少し北に分布がずれているようです。日本海でヒレナガカンパチを見ることはほとんどありませんが、カンパチは北海道近くまで見かけるようです。

逆に南方はどうでしょう。私は奄美大島や沖縄のダイビングではヒレナガカンパチばかりでカンパチを見かけず、南限はもっと北のほうなのかな、と思っていました。ところが最近になって釣りの世界では沖縄本島から宮古、石垣、与那国まで2m近い巨大なカンパチがどんどん釣り上げられるようになりました。実は、南の島では、カンパチは100m以上の深海に棲息していたのです。当然、深海のほうが水温が低いでしょうから、世界中の暖海に棲息する、という意味がやっと分かりました。

ハタの仲間の回で、マハタが成長するにつれて深海に移動し、カンナギと呼ばれることを書きましたが、カンナギは姿形が変わりすぎて最近までマハタの老成魚と分からなかったのです。その点カンパチは大きくなっても少し顔が赤くなるだけで、一目瞭然でカンパチと判別できます。ただ、僕たちダイバーの前に現れるのは1mまでで、老成魚と水中で出会うのは難しいようです。

資源としてのブリ、カンパチ

前回に少し触れましたが、1970年頃よりブリの養殖が盛んになり、50cm前後をハマチとして出荷されるようになりました。この養殖ハマチは、流れ藻について流れてくる「モジャコ」とよぶ稚魚を漁獲して種苗にするので、当時は天然魚の資源は減少していたようです。

ハマチの養殖は大幅に減少したものの、もう少し大きく育てて70センチ前後を養殖ブリとして出荷されるようになりました。養殖ブリはとても脂質が多くなるので、最近ではお刺身のほかに、背身を焼き物用の切り身、腹身をブリシャブ用として市場で見かけます。

資源量がふえた天然ブリは日本海側の氷見や能登のブランド魚を除き、価格が下落しています。日本人の味覚が「脂ののったサカナがおいしい」と感じるように変化してきたことも影響しているようです。紀伊半島ではメジロ(70センチくらいの天然ブリ)の飼い付け漁といって長期間餌を撒いて行う漁が採算割れで行われなくなりました。そうすると撒き餌を採れずにさらに脂質が少なくなったメジロが安くなる、という悪循環が起きています。

ブリの天然魚と養殖魚は身の色で簡単に見分けられます。天然は養殖に比べて赤みがかっています。日本海で定置網に入った50センチクラス(ヤズかハマチかフクラギ)など信じられないような低価格で流通してきます。ぜひ、おいしくいただきましょう。自分にとっては、昔、田舎から送られてきた懐かしい味です。

ヒラマサはモジャコに混獲される稚魚からの養殖のみで、養殖魚がとても少なく、天然のカンパチとヒラマサはとてつもなく美味しい高級魚、とだけ申し上げておきます。

ちなみに、自分は天然物しか食べない、などとは決して申しません。毎日欠かさずサカナを食べたいのと、あらゆるサカナを食べ比べたいので、養殖物も冷凍物も外国産もOKです。ただ、あなたは一体誰なのよ?がわかっていることが唯一の条件です。

以上、今回も最後まで好き勝手なウンチク話にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

筆者プロフィ-ル

西川 守(にしかわ まもる)
PADIジャパン/大阪オフィスのスタッフ。
とにかく魚が大好きで、いつもダイバー、釣師、魚屋さん、料理人のそれぞれの視点で魚を観察できる。 おかげで、いわゆるレアものより普通の温帯にいる魚が得意。 大の魚好きなことが高じて、オリジナルのPADIスペシャルティ「サカナとの遊び方SP」を作ってしまう。これまでに、白崎海洋公園、串本、越前、牟岐、大分、佐世保、上五島で、この「サカナとの遊び方SP」のイベントを開催。TVチャンピオン(テレビ東京系/現在は放送を終了)でお刺身を食べて魚種を当てるさかなクンを見て感動するが、いつの間にかそれが自分の得意技にもなってしまう。「生まれ変わったら伊豆大島の波浮港の水底で、つぶらな緑色のひとみで 仲間とひしめき合って水面を見上げているハオコゼになりたい」と常々思っている。

イラスト

友永 たろ(ともなが たろ)
イラストレーター。主に キャラクター製作、児童書イラストを描く。
魚や水生生物が大好きで、独特のタッチで描かれる魚たちのイラストはいろいろなところで目にかかることも多い。
最近ではFlashでムービー作成にはまっている。
ホームページ「ぼくのすいぞくかん(http://boku-sui.net)でイラスト&Flashムービー公開中。

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