海で出会った「FantaSea」の世界 -第2回- 「水中写真家への道」
うみカメラマン むらいさち が

海で出会った「FantaSea」の世界

第2回 「水中写真家への道」

皆さん、こんにちは! 写真家のむらいさちです。7月7~24日に開催される写真展「FantaSea」と連動してスタートした連載コラム「FantaSeaの世界」。2回目となる今回は、僕が水中写真家になるまでをお話ししようと思います。
⇒写真展「FantaSea」の詳細はこちら

PADIダイブマスターとなってダイビングを仕事にするため、沖縄に移住した僕は、そこで約4年ほど、水中ガイドを経験しました。僕が働いていた当時は、フィルムカメラが主流で、デジタルカメラは皆無。水中写真は今のように誰でも気楽にできるものではありませんでした(今は本当に良い時代です)。もちろん、当時も写真に興味がないわけではなかったのですが、それよりは海の楽しさを伝えることが楽しくて、結局、沖縄に4年いたのに水中写真は撮ったことがありませんでした。でもその4年間、自分の目でしっかりと海の世界を見られたことは、とてもプラスに働いていたと、今回の写真展「FantaSea」をやろうと思った時に感じることができました。

何度会っても興奮してしまう、世界最大のエイ「マンタ」。砂地で撮影していると、いきなり後ろから現れて、頭スレスレを通過。息を止め、仰向けに撮影しました。手を伸ばせば触れる距離でした。

さて、20歳の頃から海しか見ていなかった僕は、海のない埼玉に戻ることになりました。ずっと憧れていたダイビングの仕事を辞めてしまった時に、次に何をやるのか、やりたいのか、まったく先が見えませんでした。とはいえ、そのまま引きこもっているわけにはいかないので、ある大学病院の食堂でアルバイトを始めました。内容は、軽食作りと、皿洗い。この単調作業のおかげで(?)じっくりと自分自身を見直す機会ができ、自分が今後どうなりたいのか? そんなことを悶々と考えていました。

そんな感じで2カ月ほどが過ぎ、「写真をやってみたい」と思うようになりました。思い立ったらすぐ行動。アルバイト先をフィルムの現像工場に変更しました。バイト仲間に写真好きな人がいたので、いろいろ教えてもらうのですが、どうしても写真用語が頭に入らず・・・。その後、簡単な写真教室に3カ月ほど通い、そこで初めて写真の楽しさを少し知ることになりました。

そこから、その写真教室で講師をしていた、広告カメラマンのアシスタントに誘われ、念願の写真の世界に足を踏み入れることに。モデル撮影や化粧品などなど、撮影は多岐に渡りました。まったく知らないことだらけの世界で楽しかったです。ミスも多く、数時間かけて撮影したらフィルムを入れ忘れてた、なんてこともありましたが・・・。そんな状態でも1年ほどアシスタントをやらせていただき、多くのことを学びました。

ウミシダに隠れる、小さなスズメダイの赤ちゃん。やっぱり魚も人間も、子供の頃はかわいいものです。夏前、子供たちが一気に増え始め、海は賑やかになります。

ここで大きな転機が訪れました。撮影に来ていた編集者さんから、「ダイビング雑誌で、カメラマンの助手を募集してるよ」という話があったのです。カメラの業界に入ってまだ1年しか経っておらず、知識も技量もまったく伴っていない自分に、そんな役が務まるのか? とても不安もありましたが、「もしそこでカメラマンになれたら?」と、イメージしたら心がワクワクしました。写真の道に入って、初めて将来が思い描けた瞬間でした。

その後、面接を経て、採用されたのですが、この会社に入るまで水中写真は一度も撮ったことがありませんでした。そんな僕を採用してくれた会社には感謝です。 水中カメラ機材も持っていない僕は、機材を借りて練習のため、毎週伊豆の海に通い始めました。「借金してでも海に行きなさい!」。そうやってお尻を叩いてくれた上司の言葉が今でも忘れられません。

そんな日々が1年ほど続き、少しずつですが誌面に写真を載せてもらえるようになりました。まだまだフィルム全盛の時代、現像が上がるまでのドキドキ感は今でも忘れられません。 ダイビングのスタイルも、楽しむものから、写真を撮るためのものと、その意味も変わりました。

沖縄から帰ってきたとき、正直、自分がダイビングの世界に戻るとは思いもしませんでした。 人生は、今は無駄だと思うことでも、きっとそれは意味のあることなのだと思えるようになりました。

次回は、その後独立してフリーランスになるところから、今回の写真展「FantaSea」に至るまでを書きたいと思います。

これも小さなスズメダイの子供。体長は1センチほど。ちょこちょこ動くので、こっちも右往左往。こんな広い海で、そんな小さな魚に翻弄されているのが、なんだか可笑しくなって笑えてきました。

むらいさち Profile

うみカメラマン。沖縄でのダイビングインストラクターを経て写真の世界へ。現在はフリーランスで、水中に限らず地球のあらゆる場所で「しあわせのとき」をテーマに撮影を続けている。2016 年7月7 日~ 24 日まで《伊藤忠青山アートスクエア》にて、水中写真展「FantaSea」を開催し、今までにない、ファンタジックな水中の世界を展示。著書に、写真集「きせきのしま」(小学館)、「LinoLino」「ALOHEART」(LifeDesignBooks) がある。

⇒オフィシャルサイト

ページトップ