自然写真家・高砂淳二が贈る

美しきサンゴ礁の海

-第3回- 日本


沖縄の元気なサンゴの群生。サンゴが元気だと、そこに棲む生物も多様だ。

言うまでもなく沖縄のサンゴは素晴らしい。繊細でカラフルな、世界でトップクラスの美しいサンゴだ。昔は元気なサンゴがあまりにもたくさんあって、サンゴの上を平気で踏んで歩いたり、石コロと同じような扱いをしたりしていたほどだった、と聞いたことがある。

「沖縄海洋博」というイベントが1975年にあり、その時にいろいろな建物を建てたり道路を作ったりという巨大な“開発”が始まり、赤土が大量に海に流れ出て、海水が汚染され、その時かなり広範囲に、本島のサンゴが死んでしまったという。

その後も、オニヒトデの大発生や白化現象などにも見舞われながら、沖縄のサンゴは死滅したり復活したりという状況を繰り返している。現地のダイビングショップの人たちの懸命のオニヒトデ駆除や、注意深いアンカーリング、お客さんへの啓蒙活動などもあり、何とか世界的な美しさが保たれている。

あまり知られていないのだが、実は日本の対馬が、世界のサンゴ礁の北限だ。しかし世界でも貴重なこの北限のサンゴ礁は、日本を含むアジアの各国から流れつくプラスチックごみや漁師の漁網などにより、その貴重さを全く感じられない状況で存在してしまっている(注)。一方“礁”を形成しないサンゴ自体は、伊豆や千葉の房総半島など、かなり北の海域でも見られる。温暖化の影響か、北方のサンゴは逆に結構な勢いで増えているようだ。

東京湾の出口にあたる館山にもたくさんのサンゴが育ってきている。それを見た後に、内陸の川に残るという「サンゴの化石」を見学しに行ったことがある。川の水に半分没した状態で姿を見せていた、やや白っぽい岩は、確かにサンゴ特有の、ブツブツのサンゴ穴がしっかりと開いた石灰質の化石だった。これまでも何度となく、大地の隆起や沈降、天変地異などがあって、今のこの地球の状態になったのだということをしっかりと物語っていた。

今の僕らの時代に、せめて人為的なことによる地球環境の激変だけは避け、次の世代に、健全なサンゴやサンゴ礁が見られる地球を残したいものだと、そのサンゴの化石を見て改めて思った。

(注)年内には、NPO法人OWSが対馬サンゴ礁の海底ゴミ除去を行なう予定。


伊豆・安良里のサンゴ。浅瀬を元気なサンゴが被い尽くす。

館山の内陸にあるサンゴの化石。昔はここが海底で、サンゴが繁茂していたのだ。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。
ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。
最新作「Light on Life」をはじめ、「Dear Earth」「night rainbow」「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」ほか著書多数。
ザルツブルグ博物館、ニコンThe Gallery、東京ミッドタウンフジフイルムスクエア、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。2008年にはコニカミノルタプラザにて、外務省主催・太平洋島サミット記念写真展「Pacific Islands」を担当。自然の大切さ、自然と人間の関係性、人間の地球上での役割などを、トークショーやメディアを通して幅広く伝え続けている。
*海の環境NPO法人“OWS(Oceanic wildlife society)”理事

◆高砂淳二xニコン 「The Planet 2」好評連載中! http://www.nikon-image.com/sp/theplanet/
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サンゴ礁豆知識③
サンゴがあるのはどんなところ?

サンゴ礁をつくりだす造礁サンゴの場合、体内に共生する褐虫藻の光合成のために光が必要です。そのため、だいたい水深20m以浅にさまざまな種類のサンゴが分布しています。水温が18~30度くらいまでの暖かい海が最も生息に適しているため、熱帯・亜熱帯に多く、暖流が流れる各大洋の西側に、特に多くのサンゴやサンゴ礁が分布しています。世界で最もサンゴの種類が多いのは、インドネシア、フィリピン、ニューギニアで囲まれた海域で、ここでは450種以上のサンゴが確認されているそうです。

ちなみに日本は、サンゴとサンゴ礁の分布からは北限にあたりますが、南から黒潮が流れ込んでくるため、同じ緯度のほかの地域に比べると、多くのサンゴが分布しています。北に行くほどサンゴの種類数は減少していきますが、太平洋側では館山湾、日本海側では金沢周辺の海域まで、造礁サンゴの生息が確認されているそうです。一方、サンゴ礁の北限は、以前は日本では種子島、世界では大西洋のバミューダ諸島といわれてきましたが、最近では北九州の壱岐・対馬にサンゴ礁の地形があることが確認され、注目を集めています。

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