自然写真家・高砂淳二が贈る

美しきサンゴ礁の海

-第4回- モルディブ


深いブルーと、浅いリーフや砂州のコントラストが美しい。

モルディブの国際空港から別の環礁に行くセスナ機からの眺めは、初めて見た人にはあまりにも鮮烈だ。深いブルーの海に、エメラルドグリーンに輝くリーフや砂州が点在している光景が、この世のものとは思えないほど美しいのだ。

モルディブには26の環礁があって、そこに1200ほどの島が水面上に顔を出している。“顔を出している”、というのは、モルディブの島々は、環の形をしたサンゴ礁の淵が水面上に出て島になっているものや、環の内側でも海流で砂が集まったりして水面上まで盛り上がり、そこにヤシの木などの植物が生えて島になっていったものだからだ。

潮流が、環礁と環礁の間や中を巡り続けているために、サンゴや生物層が豊かで、ご存じのようにモルディブはダイバーのパラダイスともなっている。しかしそんなパラダイスも地球温暖化には勝てず、水温が上昇し、サンゴの死滅がどんどん進んでいるのだ。

地球温暖化による影響で、サンゴの死滅とセットになってモルディブを襲っているのが、海水面上昇の問題だ。水面上に“顔を出している”だけの、モルディブの島々の海抜の平均は、なんとたったの2.4メートル。海水面が1メートル上昇すると、モルディブの国土の実に約80%が水没してしまうそうなのだ!

そんな平らな島は、2004年のスマトラ島沖地震では当然大きな被害を受けた。その時日本が行なった多大な援助に感動したモルディブの人々は、決して豊かとはいえない状況にもかかわらず、日本の東日本大震災に対してこれまでにないほどの大きさの、とても温かい援助をして、お返しくれたのだった。

日本との間にそんな友情を育んでいるモルディブが、今、島が沈んでしまったときに移住するための人工島を作ったり、海外に移住先を探したりと、絶体絶命の状態になりつつある。美しい地球やサンゴを未来に残すことや、先進国が主な原因とされる温暖化で被害を受けている小さな島々のことを考えて、僕らダイバーは、今しっかりとした行動をとりたいものだ。


まだ死滅していない元気なサンゴ。島は本当に海抜がわずかだ。

モルディブの子どもたち。ヒジャブがよく似合う。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。
ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。
最新作「Light on Life」をはじめ、「Dear Earth」「night rainbow」「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」ほか著書多数。
ザルツブルグ博物館、ニコンThe Gallery、東京ミッドタウンフジフイルムスクエア、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。2008年にはコニカミノルタプラザにて、外務省主催・太平洋島サミット記念写真展「Pacific Islands」を担当。自然の大切さ、自然と人間の関係性、人間の地球上での役割などを、トークショーやメディアを通して幅広く伝え続けている。
*海の環境NPO法人“OWS(Oceanic wildlife society)”理事

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サンゴ礁豆知識④
サンゴの「白化現象」とは?

サンゴ礁を衰退させる大きな原因のひとつとなっているのが「サンゴの白化現象」。サンゴの白化現象とは、造礁サンゴが共生する褐虫藻を失うことにより、透明なサンゴ組織を通して白い骨格が透けて見え、サンゴ全体が白くなる現象のことをいいます。

このサンゴの白化現象は、サンゴに大きなストレスがかかり、褐虫藻を失うことによって起こると考えられています。サンゴにかかるストレスとしては、「高水温」、「低水温」、「強い光」、「紫外線」、「低い塩分」など。これらのストレスが、褐虫藻の光合成系を阻害し、光合成で消費しきれなくなった余剰の光エネルギーがさらに褐虫藻の光合成系を損傷することが、白化の原因となっているとのこと。調査によると、共生藻の光合成能の低下がまず起こり、その後に共生藻密度の低下(=白化)が起こることが観察されており、光合成能を失った、損傷した共生藻をサンゴが消化、排出すると考えられています。

白化してもサンゴがすぐに死んでしまうわけではないのですが、この状態が長く続くと、サンゴは褐虫藻の光合成による栄養分を受け取ることができなくなり、やがて死んでしまいます。白化を起こすのは、サンゴだけではなく、共生する藻を持つイソギンチャクなどの他の動物でも観察されることがあります。

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