自然写真家・高砂淳二が贈る

美しきサンゴ礁の海

-第5回- チューク


チュークの巨大な堡礁のど真ん中に浮かぶ、直径34mのジープ島。

ダイバーに人気のチューク諸島は、なんと周囲200キロにも及ぶ世界最大級の、1つのサンゴ礁そのものだ。そしてその巨大なサンゴの堡礁の内側にある248もの大小の島々が、チューク州というミクロネシア連邦の中心地にもなっている。

サンゴ礁が発達した海沿いの地域では、サンゴのリーフが天然の防波堤となって、そこに住む人たちの暮らしを台風などの天災から守ってくれることが多い。チューク諸島は、200キロにも及ぶ天然の防波堤で周囲を守ってもらっている、まるでお濠に囲まれたお城群のような島々、ということになる。

ところが、そんな天然の防波堤に囲まれた港を擁する島々であるだけに、戦時には、日本軍の一大海軍基地とされてしまった。結果的には、リーフ内に停泊していたたくさんの軍艦は、米軍に壊滅的に攻撃されて沈められることになったのだけれど、その沈んでしまった艦船たちもまた、サンゴのリーフに守られ、終戦後70年以上経った今も、積載物とともに当時のまましっかりと残っているというわけだ。そして今、ご存じのように世界のダイバーの人気スポットになっている。

チューク諸島の静かなリーフ内には、繊細で美しい、まるで現代風生け花のような、ヒョロ長く成長したサンゴの群体もあちこちに点在している。これもやはり、サンゴのリーフに守られている海ならではのことだろう。そんな美しいサンゴの陰で、魚たちの幼魚が、まるで安心できるゆりかごで伸び伸びと育つように、幼少時代を安全に過ごしている。

このように、サンゴは死んでも、その死骸が次々に折り重なってサンゴ礁を形成し、その内海や陸地を守ってくれるのだ。自然には無駄なものは一切存在しない、と言うけれど、まさにサンゴも、死んでも大事な役目のある生き物なのだ。


沈船には、当時使われていた食器や瓶などがそのまま生々しく残っている。

リーフに守られ、静かな内海で伸び伸びと育っているサンゴ。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。
ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。
最新作「Light on Life」をはじめ、「Dear Earth」「night rainbow」「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」ほか著書多数。
ザルツブルグ博物館、ニコンThe Gallery、東京ミッドタウンフジフイルムスクエア、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。2008年にはコニカミノルタプラザにて、外務省主催・太平洋島サミット記念写真展「Pacific Islands」を担当。自然の大切さ、自然と人間の関係性、人間の地球上での役割などを、トークショーやメディアを通して幅広く伝え続けている。
*海の環境NPO法人“OWS(Oceanic wildlife society)”理事

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サンゴ礁豆知識⑤
サンゴの天敵は?

サンゴの天敵といえば、これまでにもしばしば大発生し、サンゴ礁に大きな影響を与えてきた「オニヒトデ」。ナマコやウニ、ウミシダなどと同じ棘皮動物の仲間で、全身が毒を持ったトゲで覆われています。成熟した個体の大きさは30cm前後ですが、大型のものでは直径60cmにもなるとか。体の下側に口があり、そこから直接胃を出して、サンゴに押し付け、体外でポリプを消化して吸収するという食べ方をしているため、サンゴの骨格だけが白くきれいに残ることになります。1匹のオニヒトデが食べるサンゴの量は、1年間に5~13平方メートル。成長の速いミドリイシ類やコモンサンゴ類を好みますが、飢餓状態になると種類に関係なくすべてのサンゴを食べてしまうようです。ダイバーによる駆除活動なども行なわれていますが、実は「健全なサンゴ礁を保つためにオニヒトデは欠かせない存在」という説もあり、彼らが異常発生するのは、私たち人間による影響が大きいといわれています。本当のサンゴの天敵は何なのか、真剣に考える必要があるのではないでしょうか。

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