自然写真家・高砂淳二が贈る

美しきサンゴ礁の海

-第6回- コーラル・トライアングル


サンゴの海に多様な生物がびっしりと生きている。セブ・フィリピン

「コーラル・トライアングル」というのをご存じだろうか。パプアニューギニア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ソロモン諸島、東ティモールを結んだ三角形の海域のことで、なんと世界のサンゴの種の半分以上が生息し、3,000を超える種類の魚が集まる海域といわれている。

サンゴ礁は、さまざまな生物を育んでいることから“海の熱帯雨林”と呼ばれるが、特にその中でもコーラル・トライアングルは、地球の全海域のたった2%に過ぎないにもかかわらず、生物多様性がとてつもなく大きいことから、“海のアマゾン”とまで呼ばれているほど。そして地図を見れば一目瞭然だが、その海域は日本からとてもアクセスしやすい場所にある。つまりこのコーラル・トライアングルは、サンゴやほかの生物を観察するには、地球上で一番適した場所であり、日本人ダイバーは、とても恵まれているのだ、ということがお分かりいただけるだろう。

なんと、そんな地球の宝のような海が、今後劇的な温室効果ガス削減を行なわない限り、海水温度、海面水位、酸性度の上昇などによって21世紀末までに死滅する可能性がある、と言われているのだ。そしてWWFの報告によると、この海域のサンゴが死滅した場合、同海域の食物生産は80%減少し、1億人以上の生活が危険にさらされるのだという。

今年の台風の大きさや被害の甚大さから、地球環境はいよいよ、予告されていた方向にシフトしているのを多くの人が肌で感じているのではないだろうか。コーラル・トライアングルだけではなく、地球環境の変化は否応なしに僕らの生活にも影響を与えてくる。人類が今後も生き延びるためにも、自然に近いところにいるダイバーの視線で、地球をしっかり考えていきたいものだ。


サンゴに守られて生きるミナミハコフグの幼魚。アロタウ・パプアニューギニア。

イソギンチャクと共生するスパインチークアネモネフィッシュ。アロタウ・パプアニューギニア。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。
ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。
最新作「Light on Life」をはじめ、「Dear Earth」「night rainbow」「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」ほか著書多数。
ザルツブルグ博物館、ニコンThe Gallery、東京ミッドタウンフジフイルムスクエア、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。2008年にはコニカミノルタプラザにて、外務省主催・太平洋島サミット記念写真展「Pacific Islands」を担当。自然の大切さ、自然と人間の関係性、人間の地球上での役割などを、トークショーやメディアを通して幅広く伝え続けている。
*海の環境NPO法人“OWS(Oceanic wildlife society)”理事

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サンゴ礁豆知識⑥
サンゴとソフトコーラルの違いは?

よく「サンゴ」と呼ばれるのはいわゆる 「ハードコーラル」で、文字通り「硬いサンゴ」のこと。刺胞動物の簡易系統樹では、ヒドロ虫類のアナサンゴモドキ目、八放サンゴ類のウミヅタ目、アオサンゴ目、六放サンゴ類のイシサンゴ目といった石灰質の骨格をつくる造礁サンゴのほか、アカサンゴなどのいわゆる「宝石サンゴ」がこれに含まれます。炭酸カルシウムの骨格を大量に生産し、サンゴ礁の形成に大きな役割を果たすのが「造礁サンゴ」で、長い年月をかけて骨格が積み重なることにより、「裾礁」、「堡礁」、「環礁」といった地形をつくりだします。宝石サンゴなどは「非造礁サンゴ」と呼ばれます。
一方で「ソフトコーラル」に含まれるのは、刺胞動物のうち、ヤギ目の大部分とツノサンゴ目、ウミトサカ目。その名の通り「柔らかいサンゴ」で、角質の骨格をつくるものや、石灰質の微小な骨片を体内に充満させているものがあります。「サンゴ」というと、ハードコーラルを想像する人が多いようですが、ソフトコーラルもれっきとしたサンゴ。赤や黄、オレンジなど、さまざまな色のソフトコーラルがあり、それらが群生しているところはまるで「お花畑」のような美しさです。

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