自然写真家・高砂淳二が贈る「素晴らしき海の世界」 -第10回- 「マレーシア」
自然写真家・高砂淳二氏が贈る

素晴らしき海の世界

-第10回- マレーシア

マレーシアの海といえば、やはりシパダン島、マブール島が思い浮かぶ。

初めてシパダン島に行ったのは、今から23年ほど前のこと。ずいぶん何度も飛行機や長いドライブを経由して、やっとのことで到着したのを記憶しているが、そこで1本潜って、その魚影の濃さに「ギョエー」と、思わず声を発してしまったこともよく覚えている。

当時、島には《ボルネオ・ダイバーズ》というサービスと宿しかなかったと思う。島にはあまり人がいず、閑散としてさびしい感じがしたが、ひとたび海に入ってみると、浅瀬にはサンゴが足の踏み場もないほど繁茂しているし、1本ダイビングする間に、最低10匹のウミガメに合え、ビーチの目の前のドロップオフには、もの凄い数のギンガメアジが常に群れていた。海の中は驚くほど賑やかだった。

はじめの日は、出合うウミガメの写真を次から次と撮り続けたが、フイルムがどんどん減っていったので、2日目からは見て見ぬふりをしてやり過ごすようにしたほどだった。それまですでに世界のいろんな海に潜ってきていたけれど、正直シパダンの海では、本当に度肝を抜かれた。

夜には毎晩、ウミガメの産卵見学があり、島の老人が、懐中電灯を使って産卵中の"いきむウミガメ"を見せてくれた。ウミガメは普通、新月の夜に産卵することが多いと言われるが、シパダンのようなウミガメ天国では、そんな法則は当てはまらないのだろう。

その後何年か経って、マブール島に宿泊してシパダン島のまわりに潜ってみたが、やはり魚影の濃さは当時のままだった。巨大なバラクーダの群れに、ウミガメ君と一緒に囲まれ、僕は至福の時を過ごした。

11年前、僕は、映画『グランブルー』のモデルになったジャック・マイヨールさんと、マブール島に行った。水上コテージに泊まり、来る日も来る日も海に出かけ、潜り、写真を撮った。ジャックさんは、バラクーダの巨大な群れの中に素潜りで突っ込み、群れに巻かれてとても楽しそうだった。コテージに帰ると、ジャクージに浸かり、様々な話をした。
ジャックさんは、その旅の後まもなく亡くなった。マブール島のことを考えると、そんな切ない思い出がよみがえる。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。

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