自然写真家・高砂淳二が贈る「素晴らしき海の世界」 -第13回- 「ラパス」
自然写真家・高砂淳二氏が贈る

素晴らしき海の世界

-第13回- ラパス

「海の動物で何が一番好きですか?」と聞かれると、「イルカです」と答えることが多いのだけれども、実はそれに匹敵するほど気に入っている別の生き物がいる。それは、"アシカ"だ。

今から25年ほど前になるだろうか。初めてメキシコのラパスに行ったときのこと、「ロス・イスロテス」という岩の島に行った。近づくにつれて、なんか水族館っぽい臭いが鼻をかすめたかと思うと、「オ~ッ、オ~ッ」と、やはり昔水族館で聞いたことのある声が聞こえてきた。そう、無数のアシカたちだった。岩の上で寝そべっていたり、あるいは海に入って顔を上げて、興味津々でこっちを見ていたり・・・。そこはアシカ天国だった。

僕はいてもたってもいられなくなり、バタバタと機材をセッティングして海に入った。いるわいるわ、アシカ君たちが遠巻きにこちらを見ている。そのうち子どものアシカたちが、僕らのところに恐る恐る近づいてきて、なんと、こちらにちょっかいを出してくるようになったのだ! 野生のアシカがこんなことしてくるなんて、もう僕は興奮状態に陥った。

やがて、カメラのレンズに"ぶちゅーっ"とひげ面でディープなキスをしたり、落としたスノーケルをくわえて逃げてしまったり、あるいは二の腕を甘噛みしてきたりと、もうやりたい放題に。どのアシカも、体全体から"ちょっかいをだすことに全精力を注いでます"、という雰囲気が滲み出ているのだ。

このとき以来、僕の中では、"ラパスといえばアシカ"というイメージとなり、アシカの大ファンになってしまった。でもあまり調子に乗ってアシカの子どもたちと遊んでいると、たまに大きく怖いボス親が、思い切り威嚇してくることがあるのだ。これはかなり恐ろしい。行く機会があったら、気をつけてくださいね。アシカらず・・・。

一度、若いアシカが僕の背後から忍び寄って、僕の毛髪寂しい頭頂にヒゲもじゃの口をつけ、ゆらゆら揺れる毛をもて遊ぶかのように、むしゃむしゃと、イタズラし始めたことがある。僕は、嬉しいやら、毛をまとめて引っこ抜かれたらどうしよう、という恐れとで、複雑な気持ちだった。少しして、無事離してくれたのだが、いっしょに潜っていたダイバーたちは、もう水中でゲラゲラ笑い転げていた。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。

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