自然写真家・高砂淳二が贈る「素晴らしき海の世界」 -第20回- 「ジンベエザメに出合える海」
自然写真家・高砂淳二氏が贈る

素晴らしき海の世界

-第20回- ジンベエザメに出合える海

今は、「ジンベエザメが見たい!」と言えば、お金さえ払えば見られる世の中だ。それは、世界にファンダイバーが増えていろんな海の情報が明らかになってきて、どこの海にいつ行くとジンベエザメが見られる、ということが分かってきたからだと思う。

以前はジンベエザメには、「一生に一度合えたらラッキー」という雰囲気があった。そんな頃、北西オーストラリアのニンガルーリーフという、少し前に世界遺産に指定された海に、サンゴの産卵の時期に合わせてジンベエザメが集まってくるらしい(もちろん食べるため)ということが分かり、そこでたぶん世界で初めて、ジンベエザメウォッチングツアーが立ち上がったのだった。

そのツアーは、セスナを飛ばして空からジンベエを見つけ、それをボートに無線で伝えてジンベエを海の中で見よう、という突拍子もないものだった。セスナを飛ばすということでかなりコストがかかるため、ツアー費も80万円ほどしたのだけれど、それでも「夢のジンベエザメが見られるのなら」ということで結構話題になったのを覚えている。僕も無事見られた日の夕方、北西オーストラリアの、だだっ広くてとにかく何にもない、見渡す限り赤い大地の続く平原を見て、「こんなに遠くまで来てやっとジンベエを拝むことができた」と感無量だった。現在もそのツアーは行なわれているようだけれど、パースからのツアー費は1,600オーストラリアドル前後と、だいぶ安くなったようである。

今は、フィリピンのセブ島で、漁師さんが餌でおびき寄せて複数のジンベエを集めて見せてくれたり(発想がさすがフィリピン、凄い!)、モルディブの豪華リゾートや立派なクルーズ船に宿泊して、ジンベエポイントに潜って当たり前のように見られたり(超贅沢!)と、その時から比べると凄い時代になった。

そうは言ってもジンベエ様はジンベエ様。普通そんなに何度もジンベエザメに合いに行ける人などいないに違いない。いくら健忘症の人でも一度見たら絶対に忘れることはない、超大もの生物である。

ニンガルーリーフでジンベエザメを撮影していたときのこと、うっかりジンベエのまん前に入ってしまい、そのまま僕に突進してきたことがある。ジンベエはサンゴの卵を食べるのに夢中で、ぶつかるまで僕の存在などまったく頭になかったようだ。結局ジンベエは僕に激突し(ジンベエはそのまま何事もなかったかのように卵を食べ続けていた)、僕はジンベエの頭をしっかりカメラで受け止めるはめになった。
カメラを見てみると、レンズには大きなヤスリで削ったような傷がしっかりと付いていた。やっぱりジンベエもサメ肌なのだということを、身をもって知ることになった小事件である。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。

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