自然写真家・高砂淳二が贈る「素晴らしき海の世界」 -第21回- 「クジラに出合える海」
自然写真家・高砂淳二氏が贈る

素晴らしき海の世界

-第21回- クジラに出合える海

クジラをボートの上から見られる海は多いけれど、実際に大型のクジラと一緒に泳げる海は、世界広しと言えども本当に限られている。タヒチのルルツ島はその貴重なひとつ。ザトウクジラが南極とルルツあたりを回遊して、子作り、子育て、食糧補給を繰り返している。

何年か前、僕はこのルルツに行った。ルルツ島はとても小さいからそんなにたくさんのザトウクジラがやってくるわけではないのだ、と現地ガイドのエリックさんは教えてくれた。確かにこの時、島のまわりには2頭のクジラしかいなかった。小さな島のまわりでその2頭を見つけるのは簡単だったが、水中で撮影するのはとても難しかった。2頭ともとてもナーバスで、ボートがちょっと近くに来るだけですぐに潜ってしまうのだった。

5日間を予定していた滞在のうちの4日間が経った時点で、彼らを水中でちゃんと撮影することはできていなかった。最終日の夕方、無念な想いを引きずってハーバーに戻る途中、これまで2つの大きな黒い背中だけだった彼らの間に、なんと小さくて白っぽい背中が見え隠れしているではないか。

「赤ちゃんが生まれたんだ!」

ガイドのエリックさんが興奮して叫んだ。そうだったのだ。出産直前だったから、ボートが近寄るのさえ嫌がるほど、とても繊細な状態だったのだ。

僕はもちろん滞在を延長した。次の日、さっそくクジラの親子は目の前に姿を見せてくれた。子供特有の好奇心からこっちのほうに近寄って来てくれた子クジラを、母親は「ダメよ、変な人(?)の方に行ったら。」とでも言うように、向こうにゆっくりと導くように連れて行った。赤ちゃんクジラの尾ビレは、まだちょっと丸まっていてふにゃふにゃしているようだった。まだ生後1日、初めて見た人間は僕だったのだ・・・。

最終日に何かが起こる、というのは本当に多い。だいぶ前、カリブ海でジャック・マイヨールさんとクジラとのツーショットを狙っていたときのこと。来る日も来る日もクジラに出合えなかった。あきらめてヨットのアンカーを上げて動き出した瞬間、数頭のザトウクジラが集まってきて、ヨットを囲んだのだった。結局この最後の30分で写真集のほとんどができ上がったのだった。特に相手がクジラの場合、どういうわけか最終日のマジックは本当に多いのだ。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。

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