自然写真家・高砂淳二が贈る「素晴らしき海の世界」 -第24回- 「マナティーに出合える海」
自然写真家・高砂淳二氏が贈る

素晴らしき海の世界

-第24回- マナティーに出合える海

海牛目。まさに"海にいる牛"という名に相応しい雰囲気をもつ生き物たちだ。海牛目にはジュゴンとマナティーがいるけれど、ジュゴンにはなかなか出合えないので、マナティーと出合える場所を紹介しよう。

マナティーと出合える場所は、アメリカはフロリダにあるクリスタルリバーだ。厳密に言うと、今回は出合える海ではなく、出合える川ということになる。ジュゴンは海でしか暮らさないようなのだけれども、このマナティーたちは、暖かい季節には海で過ごし、冬になると比較的暖かい水の湧き出る川に遡って暮らしているのだ。

マナティーたちは、その見てくれの通り、とてもおっとりとした性格をしている。息を止めて、ジーッと水底で寝ていたり、水面でボヨヨーンと浮かんでいたりすることが多い。

何年か前にマナティーを撮影しに行った時、現地のガイドさんに、そんなのんびりしたマナティーでも、最初は意外に警戒することも多い、ということで、あるアドバイスをもらった。それは、「隙をみて、彼らの喉や脇の下のあたりをクリクリっと掻いてあげるといいよ。」というものだった。

不思議なアドバイスだな、とは思ったが、まあとにかくこっそりと近づき、ヒョイッと手を伸ばして喉のあたりを掻いてみた。するとどうだろう。マナティーは急に僕に好意的(?)になり、「もっと掻いて、掻いて!」と言わんばかりに近づいてくるではないか! そう、彼らは自分では"痒いところ(気持ちのいいところ?)に手が届かない"のだ。とても気持ちよさそうに、うっとりとしているようだった。

その瞬間を境に、今度はそのマナティー君にこちらが付きまとわれることになったのは言うまでもない。

だいぶ前だけれど、バヌアツでジュゴンに出合ったことがある。湾に入ってきて人間と遊ぶジュゴンが1頭だけいたのだけれど、遊んでいるうちに急に暴れ狂ってしまう、ちょっと変わったやつだった。ジュゴンの肉は美味しいとかで、島の人たちは見つけると捕まえて食べていたらしいが、その1頭だけは残しておいたようだった。もしかしたら、家族を人間に持って行かれ、トラウマのようなものがあって急に暴れてしまっていたのかもしれないなあ。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。

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