自然写真家・高砂淳二が贈る「素晴らしき海の世界」 -第26回- 「ギンガメアジに出合える海」
自然写真家・高砂淳二氏が贈る

素晴らしき海の世界

-第26回- ギンガメアジに出合える海

ギンガメアジは、ときにちょっと深いところに群れていることもある。水深30mのところにいるギンガメを撮影しようと下りていくと、彼らは40mに行く。さらに40mに行くと今度は50mに。そんな時のギンガメ君たちはダイバーをあまり近づけたくない気分だ。無理せずさっと諦めて、別のときにまた狙ってみると、浅場で思い切り近づけてくれたりもする。そんなシャイな面がまたいいではないか。

ダイバーにはおなじみ、ギンガメアジ、通称「ギンガメ」。でもこの名前をダイビングをしない人に話すと、「何それ? カメ? それともお魚のアジ?」といった具合に、ほとんどの人が何のことだかさっぱり分からない。マニアックな魚なのだ。こんな時大きな声で教えてあげたくなる。"食卓にのぼる普通のアジとは見栄えがかなり違う、巨大な群れを作って大海原を悠々と泳ぐ美しい銀色の大きな魚なのだ"と。

ギンガメの大きな群れに巻かれて泳ぐのはかなり贅沢だ。マンタやジンベエザメに出合うのもとても感動的ではあるけれども、何百尾というギンガメに巻かれるという体験は、その時潜っている海から一気に異空間に連れ去られるような、不思議な感覚を与えてくれる。海の中から無尽蔵に湧き出てきて自分を取り囲み、海の水さえ存在しない、自分とギンガメだけの空間に投げ出されたような、そんな感覚を味わわせてくれるのだ。

そんなギンガメアジに出合える海はいろいろとあるけれど、中でも特に僕の好きな場所は、インド洋のモルディブだ。

普通は、ボートで広い海に出てドドーンとした海に潜って出合う、ということになるのだけれど、モルディブでは多くの島で、桟橋の下やビーチのちょっと先にあるドロップオフのあたりに、グルグルと当たり前に渦を巻いていたりする。フィンとマスクだけをつけて、ヒョイッと桟橋からジャンプして、うまくスルスルっと素潜りすれば、ギンガメ渦に入ることが可能というわけだ。

子ギンガメの群れから成人ギンガメの大群まで、その時期のギンガメたちにすぐ目の前の海で出合うことができるモルディブは、なかなか凄いと思う。ただのハネムーンリゾートなんかではないのである。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。

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