自然写真家・高砂淳二が贈る「素晴らしき海の世界」 -第29回- 「赤の世界」
自然写真家・高砂淳二氏が贈る

素晴らしき海の世界

-第29回- 赤の世界

RED

ダイビングの講習を受けたとき、「水の中を光が通ると、暖色系から順に色が失われてゆき最後にブルーだけが残る」といった内容の説明を聞いた記憶がある。その後水中写真を撮るようになって、海中で目には少し赤っぽく見えるものでも、写真に撮るとほとんど真っ青になってしまうのに驚いた。のちに、ブルーの世界の中では人間の目は"赤"を感じようと微妙に色補正をして見ているが、正直なフイルムには真っ青に写るのだ、ということを知り、人の目の精密さにも改めて驚いた覚えがある。

海の中には、いろんな色をもった生き物たちが暮らしている。しかし、たとえば赤い体色の生物たちは、その持っている"赤"は、人間の目の補正を別にすれば、あくまでも陸に上げたときに初めて見える色であり、暮らしている環境下では決して見せることはなく、赤というある種の個性を秘めたまま一生を終えるものなのだ。だから彼らの色を、"体色は赤"などというのは、あくまでも陸上生物である人間の見方、と言えなくもないかもしれない。

そんな彼らの秘めたる赤を、僕ら水中写真を撮る人は、すべての色を含んだ新たな人工太陽であるストロボを使って、水中ではありえない真っ赤な生物として写し取る。だからそこには驚きが写り、新鮮さが写るのかもしれない。

それにしても、自分の本来の色とはいったい何なのだろう? 僕ら人間が、肌の色は同じでもそれぞれ秘めた色(個性・オーラ?)が違うのも、ある意味同じようなことなのかもしれない。

何年も前、モノクロで水中写真を撮ろうと、モノクロ用コントラスト強調のための赤いフィルターを付けて潜った。水深20mでファインダーを覗いてビックリ。何も見えないのだ!
でもそりゃあそうである。赤い色を失った海中で、赤のみを通す赤いフィルターを付けたら、何も見えなくなってしまうのは当然なのだ。僕は水深20mで苦笑いをし、その1本をファンダイブにすることを決めた。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。

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