自然写真家・高砂淳二が贈る「素晴らしき海の世界」 -第33回- 「緑の世界」
自然写真家・高砂淳二氏が贈る

素晴らしき海の世界

-第33回- 緑の世界

GREEN

春先の海に潜ったとき、海が緑色に濁っていて、思わず「汚~い!」と叫んだことはありませんか?

人が汚してしまっている海ももちろんあるけれど、春先など、海が緑色に濁って極端に透明度が落ちているときなどは、正確にいえば「汚い」のではなく、「豊か」なのだ。葉緑素をもった植物プランクトンが多くいる海が、緑色に"濁って"見えているからだ。

植物プランクトンは海の中の食物連鎖の底辺にあって、それを動物プランクトンが食べ、さらにそれを魚や他の生物が食べる、といった具合に、植物プランクトンがいてくれてはじめて、イソマグロがいたり、ジンベエザメがいたりと、多様で豊かな海が成り立ち、僕らダイバーも楽しめる海になるのだ。

しかもそれだけではない。植物プランクトンは、光合成をして酸素を供給してくれ、その量はなんと地球上の酸素の半分を担っているというから偉い。

南の海がいつも透明度がいいのは、海の中にプランクトンが少なく、ある意味「空っぽ」であるということ(でも潜っていて気持ちいいけど)。これからは海が濁っていても「今日は味噌汁みたい!」とは言わず、「今日は豊かだなあ~♪」とでも言って、浮遊物を無心に捕食しているソフトコーラルの様子でも、じっくり観察するのもいいのではないだろうか。

ずいぶん前、真鶴で雑誌の編集者や他の何人かと潜って撮影していた時のこと。"豊かな"海だったので、その日は水中視界が悪かった。途中で編集者を見失ってしまい、少し海中を探しても見つからなかったので、水面に顔を出して浮上を待った。浮上してこなかったのでビビりながらみんなで岸に戻って待った。しかし待てど暮らせど上がってこないので、みんなすっかり青くなって、「警察に言うしかない」ということになった。電話をかけようとしたその時、編集者が防波堤の上で悠々と甲羅干しをしているのを誰かが見つけた。
安心するやら頭にくるやらで、そのあと編集者は、みんなからの機関銃のような言葉の暴力を浴びせられることになった。あの時は本当に、次の日の新聞の見出しまで想像してしまったもんなあ。

高砂淳二プロフィ-ル

たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。

◆高砂淳二 オフィシャルウェブサイト http://www.junjitakasago.com
◆高砂淳二 オフィシャルブログ http://junjitakasago.com/blog/
◆高砂淳二 Facebookページ http://www.facebook.com/JunjiTakasago

ページトップ