~母なる海を巡る旅~

Planet Blue

-Scene 2- グレート・バリア・リーフ崩壊の危機

世界最大のサンゴ礁、グレート・バリア・リーフ。その特徴は、生物の多様さにある。軟体動物は5000種、魚は1800種、サメは125種、そして、数え切れないほどの小さな生物たち。だが何といっても圧巻なのは、広大なサンゴ礁だろう。それがユネスコの世界遺産に登録された最大の理由だ。

その豊かな海が、急激な環境変化の中で、崩壊の危機にさらされている。グレート・バリア・リーフが形成されたのは数百万年前。それ以来、絶えず変化する地球環境によって、サンゴ礁は発達と縮小を繰り返してきた。ところが今、この発達を促してきた条件がかつてない速さで変化し、今度ばかりは乗り越えられるかどうか分からないという。

専門家は、激しさを増す気候変動が、壊滅的な打撃を与えるかもしれないと指摘する。海水温の上昇や過度の紫外線がストレスを与えると、サンゴは白化する。白くなったサンゴは海藻類に覆われ、死滅してしまう。

海の生物に栄養を与える植物プランクトンも過去60年にわたり減少している。海面が上昇したり低下したりすれば、サンゴに日光が必要以上に当たったり、十分に届かなくなったりという問題が起きる。

さらに現在、一部の海で海水の酸性化が進みつつある。それによって成長の速い枝状サンゴやサンゴ礁を固める石灰藻の成長が弱まると、サンゴ礁はもろくなり、波や嵐などの物理的作用、病気や汚染物質などのストレスで損壊してしまうのだ。

これまでは海水の酸性度が上昇してもサンゴは生き延びることができたが、これから先は厳しいと、オーストラリアの研究者チャーリー・ベロンは言う。サンゴが環境の変化に適応するには何百万年と時間がかかるのに対し、人間の活動によって放出される二酸化炭素や硫黄、窒素の量が、かつてないほど急速に増えているからだ。

では、こうした環境の激変に対して、サンゴ礁を健全な状態に保つにはどうすればいいのだろう。「エンジンを修理するには、まずエンジンが動く仕組みを理解すること。サンゴ礁も同じです」と語るのは、ジェームズ・クック大学の海洋生物学者テリー・ヒューズだ。ヒューズたちは、サンゴ礁の破壊を防ぐ試みをより効果的にすべく、生態系の働きを研究し続けている。

「数十年におよぶ海水温データから、水温の上昇に適応しているサンゴを特定し、その分布域一帯を集中的に保護するのです」と語るのは、サンゴ礁生態学者のピーター・マンビーだ。白化現象から回復するメカニズムを解明し、新しいサンゴ個虫が成長しやすい条件が明らかになれば、有効な保護対策につながるだろう。

アヤコショウダイの群れが、寄せては返すチャレンジャー湾の波に揺らいでいる。

(『ナショナル ジオグラフィック日本版』2011年5月号特集「壊れゆくサンゴの王国」より)

ナショナル ジオグラフィック日本版 2011年5月号

特集「壊れゆくサンゴの王国 グレート・バリア・リーフ」のほか、「ヨセミテ 巨岩の絶壁に挑む」「乾いた夜に咲く花」などを掲載。

>>月刊誌『ナショナル ジオグラフィック日本版』最新号のご紹介

>>iPadやiPhoneで楽しめる電子版のご案内

ページトップ