磯は生き物のパラダイス 〜 最終回 冬にもらえる海からのプレゼント

磯は生き物のパラダイス

-最終回- 冬にもらえる海からのプレゼント

ダイビングと違って、冬が近づくと磯遊びや海辺の観察は一般的なシーズンオフを迎えます。
でも、本当は冬ならではの遊びがあるんです。
そんな楽しみ、そっとお教えしましょう。
さあ、今回はいよいよ最終回!

1. ビーチコーミングの楽しみ

風や波によって、浜辺に打ち上げられたさまざまなものを拾うことをビーチコーミングと言います。
九州海岸や山陰海岸などがよく知られていますが、これらの地域では、北西の季節風が吹く冬が絶好とされています。
要は、風がその海岸に向かって吹く季節が、その海岸のビーチコーミング適期ということになるわけです。
台風が通過した後などもおもしろい物が拾えますが、安全には十分に注意してください。探し場所は*汀(なぎさ)ギリギリよりも、その上方に帯状に海藻や漂着物が堆積した場所を探します。
それは大きく海が動いたときの漂着物ですから、よりおもしろいものが見つかる可能性が高いと言えるでしょう。
*波打ち際を汀線(ていせん)と呼ぶため、今回はこちらの漢字を使用しました。

2. 網干し場で海底を覗く

冬にはさまざまな漁が盛んになり、水揚げ後に網を掃除したり、干したりしている光景を見ることがあります。
そんなときに、漁師さんにちょっと声をかけて作業を見せてもらいましょう。
「ダイビングで海の底は見ている」と思っていたあなたも、「こんな生き物がいたの?!」と驚くかもしれません。
さまざまな種類の大型ヤドカリ、大型のヒトデやタコノマクラ、ノコギリガニやカラッパなどのカニ類・・・
私が網干し場で初めて見た生き物は少なくありません。特にいろいろな魚を見たいなら、これはもう網干し場しかありません。
網干し場は、その付近の海底博物館なのです。

3. 誰もが欲しがるアオイガイ

自然物の漂着物人気ナンバーワンは何でしょうか。
もちろん好みにもよりますが、対馬海流域ではアオイガイではないでしょうか。
別名カイダコと言われることからもわかるように、これは貝を作るタコの仲間。
ときには拾ったときにタコが生きていることもあります。しかし、その貝は極めて薄く、白くて表面には波模様が刻まれているという華麗さ。
初めて拾ったときは誰もが感動するでしょう。
殻を作るタコの仲間は他にもいて、黒潮海域ではタコブネ、チヂミタコブネなどが打ち上げられることがあります。

4. 砂浜のサーファー今いずこ

といっても、冬場に沿岸でアザラシのように群れている人たちのことではありません。
砂浜には打ち寄せる波に乗って汀近くまで移動し、波が引くと同時にするすると砂に潜っていくナミノコガイという二枚貝がいます(ブシノハナガガイというのもいます)。
別名ナミアソビガイといわれるように、そのサーファーぶりは見ていて飽きません。これは波で巻き上げられる有機物を食べるための行動とされています。
ただし、この貝は水が綺麗で砂粒が揃っているような海岸でないと見ることができません。
最近は、海の汚れが進み、これらの貝が見られる場所がずいぶん少なくなってきています。
あなたのいつも行く海はどうですか?

5. アブナイ奴はいつまでもアブナイ

ビーチコーミングや網干し場観察では、素手での探索は危険が伴うので注意しましょう。
カツオノエボシの刺胞やアイゴなどのヒレには毒があります。
死んでいるからと不用意に触ると、痛い目にあうことがあります。また、打ち上げられた人工物にも刺激性のある薬品が入っていたりすることもあり、安心は禁物です(自然物よりずっとコワイ)。
ビーチコーミングでは、堆積物を探ったり、正体不明の生き物を触るのには、大き目のピンセットや揚げ物を掴むトングなどを使うのがよいでしょう。
また、運よく拾えたカニなどを壊さないように、小さなプラスチックのケースを用意しておくと便利です。

6. 浜辺で人間世界も見える?

最近は、漂着物に人工物の占める割合が増大しています。
その気になって観察してみると、ここでも発見があります。
以前は漁具や使い捨てライターなどが多かったのですが、最近ではペットボトルや発泡スチロールの破片が急増しています。
また、プラスチック製品の原料になるレジンペレットと呼ばれる小さなプラスチック球は、魚やウミガメなどがえさと間違えて飲み込んでしまうおそれもあり、漂着物の中ではこれらはワースト3といえます。
北海道ではロシア語、九州では中国語や韓国語の印刷されたものが頻繁に打ちあがります。
材木運搬船から落ちたと思われる巨大な原木丸太や、多数の大型カラーテレビが打ちあがって新聞ネタになったこともあります。
漂着物も時代を反映しているんですね。

7. 最大の獲物はクジラかメガマウスか

浜歩きをしていて、私が一番びっくりしたのは、クジラの死体に遭遇したことです。ミンククジラの子供のようでしたが、それでも全長3.5メートルほどありました。
腐敗も進んでいて、近づくと鼻が曲がりそうでしたが、その大きさに圧倒されました。
クジラが生きたまま浜に乗り上げるストランディングについては、博物館などがデータを集めているので、写真に撮ったり、大きさを記録したり、状態を観察しておく価値があります。
また、世界でまだ36体しか発見例のないメガマウスという大型のサメも、いくつかは打ちあげによって見つかっています。
あなたにもチャンスがあるかも。

最後に.

普段は車や自転車で何気に通り過ぎてしまう道も、ゆっくりと歩いてみればいろいろな発見や新しい景色があることでしょう。
磯場遊びはそれに似ています。
普段は何気に気がつかない磯場でも、ゆっくりじっくり観察してみれば、新しい発見がたくさんあることがおわかりいただけます。
ぜひ、皆さんも海に行ったら潜るばかりではなく、空いた時間にでも磯場へ足をお運びください。
長らくコラムをお読みいただきまして、本当にありがとうございました。

筆者プロフィ-ル

三宅 直人
1954年岡山県生まれ。アクアリウム雑誌の編集者を経てフリーに。
『BE-PAL』誌に「図鑑の庭」、『アクアライフ』誌に「アクアリウム歴史読本」などを執筆。
『緑・花試験集中講義』などの著書がある。

イラスト

友永 たろ(ともなが たろ)
イラストレーター。主に キャラクター製作、児童書イラストを描く。
魚や水生生物が大好きで、独特のタッチで描かれる魚たちのイラストはいろいろなところで目にかかることも多い。
最近ではFlashでムービー作成にはまっている。
ホームページ「ぼくのすいぞくかん(http://boku-sui.net)でイラスト&Flashムービー公開中。

 

ページトップ