前回のコラムで、"より深く潜れる資格を持っているということは、「浅い深度であればより安全に潜るためのスキルと知識と経験がある」ということでもあり、40m以浅というテクニカル・ダイビングとしては「浅い水深」で減圧ダイビングを行なう場合は、より深く潜れる資格を持っているダイバーの方がより柔軟で効率的なスキル/知識を駆使することで、「より安全」に潜ることができると言えます。"と書きました。
そこで今回は、同じ水深/ボトムタイムのダイビングにおいて、基本の異なるTecRec各レベルで計画を立てた場合のプロファイルの違いを具体的に見ていきたいと思います。
・40m以浅での減圧ダイビングで比較
・「やや浅め/短め」のダイビングと、「やや深め/長め」の2種類のダイビングを比較
・すべて同じアルゴリズム(ZHL-16B、GF20/80)を使用
・残留窒素がない、最初(1本目)のダイビングとして計画
・各レベルで許容される最大限及び/または一般的な減圧ガスの使用手順で実施
・ボトムガスは空気
・ラスト・ストップは3m
※今回は各レベルの減圧時間の比較を目的としているので、実際の環境やタンク本数によるストレス等は考慮しておらず、また減圧アルゴリズム等の細かい設定も特別な配慮はしていないことをご了承ください。
※今回は各レベルの減圧時間の比較を目的としているので、実際の環境やタンク本数によるストレス等は考慮しておらず、また減圧アルゴリズム等の細かい設定も特別な配慮はしていないことをご了承ください。
ご覧の通り、このダイビングでは減圧時間にあまり差がないことが見てとれます。
言い換えれば、テック50ダイバーだからといって、減圧用シリンダーを2本持って入っても優位性は少なく、ストレスと費用がかさむだけ、と感じるかもしれません。また、一般的にEANx50よりも純酸素が入手しやすいので、結果的にはテック45レベルの装備で潜るのが最も現実的であると思われます。
ここではテック45とテック50のみ比較してみます。
減圧用ガスが2種類になることで合計の減圧時間が8分少なくなることがわかります。この8分の差を大きいとみるのか、大差ないとみるのか、意見の分かれるところでしょうが、もし冷水で透明度も悪く強い流れの中、浮上ラインにしがみついて減圧を行なうような環境下であれば、1分でも早く上がる方を選択するかもしれません。他方、暖かくて透明度の良いリゾートエリアの流れのないドロップオフで、サンゴや生物を見ながら減圧できるような環境下であれば、8分減圧が延びてもストレスを感じないダイバーも多いでしょう。
深度と潜水時間次第ではテック40レベルでも十分楽しめますが、テック45以上のスキルがあれば幅広く40m以浅の減圧テクニカル・ダイビングを、余裕をもって楽しむことができるようになります。