夏になると、よく夕立が起こります。
まだ夕日が沈まないうちにひと雨降ると、その後に綺麗な虹が現れることがあります。
俗に「朝虹は雨、夕虹は晴れ」と言われ、こんなふうに夕方に虹が見えたときは翌日は晴れますが、反対に朝から虹が現れると、それは雨の前兆という経験則があります。
虹が頻繁に見られる光学現象です。
虹の仕組みを説明するのに、虹が現れやすい夏の夕方のケースで考えてみましょう。
虹が現れるには、比較的大きい水滴と、太陽光線が必要です。夏の夕方のようなにわか雨は、主に西から東へ移動します。
また、雨が降っているところでは大粒でどしゃ降りの雨が降ったりしますが、雨雲が通ったあとはきれいに晴れて、しかも空気中のチリやホコリがすっかり洗い流されているので、空気も非常に澄んでいます。
このため、西に傾きかけた太陽から強い日差しが差し込んできます。
今、太陽に背を向けて、通り過ぎた雨雲のほうを向いて立っているとしましょう。
背中は西向き、視線は東向きです。
太陽の光が、背中越しに目の先の雨雲に差し込みます。
雨雲の下では、まだ大粒の雨が降っています。
雨粒に当たった太陽光線は反射もしますが、一部は雨粒の中に入り込みます。
このとき、水を張ったコップに立てたお箸が曲がって見えるように、光は屈折します。。
ところが、このときにすべての光が同じように屈折するのではなく、光の波長によって屈折率が異なります。
光の波長というと難しそうですが、可視光線で言えば、赤はあまり屈折しないけれど、青は屈折しやすい、といったように、色によって屈折の角度が違うと思えば大丈夫です。
色によって異なる角度で雨粒の中を進んだ光は、雨粒の向こう側で反射して、雨粒から出てくるときには再び屈折します。
この2回の屈折のせいで、太陽光線は赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の、いわゆる虹の7色に分かれて、雨雲のほうから我々の目に飛び込んできます。
上のほう、あるいは左右に角度のある雨粒からは屈折率の小さい赤い光が、その下のほうや角度の小さい視線の中心よりにある雨粒からは屈折率の高い紫の光が飛び込んでくるので、我々の目には弧を描いた虹が見えることになります。
だから、虹は必ず太陽を背にした方角に見えるのです。
この理屈はじっくり考えてもらうとして、肝心なのは夕方の場合。
雨雲が東に去って、西からはきれいな夕日が差しているということです。
直前に雨が降ったかもしれませんが、西の空はよく晴れているということですから、翌日も晴れることが予想できます。
ただし、翌日も夕立はあるかもしれません。
反対に、朝から虹が現れているということは、夕虹とは逆で、雨雲が西にあるということです。
ですから、その雨雲がまもなくやってくることが考えられます。
また、夏は夕方になると地面が暖まることで上昇気流が発生し、それが夕立をもたらすこともありますが、朝から雨雲が出ているということは、すでに空気が相当湿っているか、低気圧が近づいている証拠です。その後の天気は下り坂とみて間違いないでしょう。
虹は1本だけでなく、その外側に副虹という、色が反転した虹が現れることがあります。
これは、雨粒の中での反射回数が1回ではなくて2回のものが見えている場合ですが、天気の予知には特に影響ありません。
ちなみに、俗に虹の7色と言われますが、実際はグラデーションになっています。
ですので、色の数は無数にあります。
筆者プロフィ-ル