これで完璧!ウエットスーツ選び -第2回- ウエットスーツの素材について知ろう(後編)
快適なダイビングはここから始まる

これで完璧!ウエットスーツ選び

-第2回- ウエットスーツの素材について知ろう(後編)

自分にぴったりのウエットスーツを選ぶには何を重視すればいいのか。前回は「スーツの素材」選びのポイントのひとつ目として「ゴム」について紹介しました。今回は「表面の生地」と「裏面の生地」について詳しく紹介します。

なぜスーツの表面と裏面には生地が貼られているのか?

一般的なウエットスーツには、前回紹介したゴムの表面と裏面に生地が貼られています。その一番の理由は「縫製できる」こと。ウエットスーツは1枚のパネルからは作れず、複数のパネルを接着剤で貼り合せていきます。ただ、接着剤で貼ることのできる断面積は限られているので、それだけでは剥がれたり破れたりしていまいます。それを補強するために縫うのですが、ゴムだけでは切れやすいため、表面や裏面に生地を貼ることにより、縫いやすくしているというわけです。ウエットスーツの縫製は非常に特殊で、生地を貫通すると水が通ってしまうため、フックのような針がついたウエットスーツ用のミシンで、生地を貫通しない「すくい縫い」という方法で縫っていきます。

生地を貼る理由の2つ目は「保温」のため。ダイビングでは、水中だけではなく、エキジット後のボート移動や、エントリー前の時間にも保温性が求められます。保温性を高めるためにさまざまな生地が用意されていますが、代表的なものに「起毛」生地があります。起毛の生地は毛布のようになっていて、スーツと皮膚の間に少しでも空気の層を残すのが目的。起毛の素材にもいくつか種類があり、起毛によってできる空気の層だけではなく、糸そのものに真ん中に穴をあけた、マカロニ状の「中空糸」と呼ばれる糸を使った生地もあります。この「中空糸」は、水がどんなにスーツ内に入ってきても、糸の中までは入ってこないので、そこに絶対的な空気の層が作られ、高い保温性を実現します。元々は素材を軽量化するために開発された糸ですが、ダイビングで使うとそのような断熱効果も期待できます。

【素材選びのポイント2】 裏面(内側)の生地の素材

裏面(内側)の生地については、前述した「起毛ジャージ」のほか、「スタンダードジャージ」や「ストレッチジャージ」などがあります。また、例外的には「SCSメタル」などと呼ばれるコーティング加工をしたものも。この「SCSメタル」は、「空気の層で断熱する」のではなく「生地を肌にぴったりとつけて水の浸入を最小限にする」という保温のメカニズムで、水切れの早さが魅力。一方で、耐久面で弱いというデメリットもあります。それぞれのメーカーによって、さまざまな名称で、いろいろと工夫を施された生地が用意されていますので、自分のダイビングスタイルや好みに合わせて選ぶといいでしょう。

例えば《モビーズ》では、中空糸を使った生地で「エアナップ(ウエットスーツ用)」と「エアキューム(ドライスーツ用)」という、同じように見えて機能の違う2つの起毛生地を用意しています。ドライスーツ用の生地には「吸湿発熱機能」がついていますが、ウエットスーツでこの機能がついていても意味がありません。また、乾きの速さが求められるかどうかによっても必要な機能は異なり、ドライスーツは基本的に濡れないという前提ですが、ウエットスーツは1本目と2本目の間や、終わってから帰るまでの間に、いかに早く水が切れるかが大事です。実は、一番乾きにくいのは「撥水系の起毛素材」。撥水素材は、濡れないということが前提なので、一旦水が染み込んでしまうと乾きにくいのです。また、ポリエステルは、ナイロンに比べると水を吸収しにくいのですが、肌触りがあまり良くないなど、生地によって特徴があるので、それらもぜひ考慮したいところです。


中空糸を使った起毛ジャージや、着脱性&運動性を高めるストレッチジャージ、コーティング加工されたSCSメタルなど、裏面の生地にも様々な素材が用意されています。

【素材選びのポイント3】 表面(外側)の生地の素材

裏面(内側)の素材は、「肌触り」もありつつ、やはり「保温力」が重視されますが、一方で表面(外側)に生地を貼る目的は、前述した「縫製する」ということに加え、擦れなどに対しての「耐久性」が挙げられます。スーツが岩肌などに擦れればダメージを受けますので、ヒザ周りや、BCDに擦れる肩周り、ウエイトをつける腰周りなどは、基本的に「ゴムむき出し」はNGとされています。ゴムに何かしらの生地を貼って、擦れに対する強度を出すのが一般的です。

とはいえ、表面に生地を貼らない「スキン」も人気があり、特にインストラクターに多く見受けられます。なぜ耐久面を差し置いてまで、表にスキンを使うのか。ひとつは「着心地の良さ」が理由として挙げられます。ゴムだけの状態が一番柔らかくて伸びるので、やはり着心地はいいです。何かしら生地を貼ると、ゴムよりも伸びる生地というのはなかなかありませんし、接着剤の限界もあるので、どうしても着心地は悪くなります。


岩などに擦れる機会の多い表面の生地は、耐久性も大きなポイント。最近では耐久性と柔軟性を兼ね備えたストレッチラジアルなどの素材もあります。

もうひとつは「気化熱損失」の問題。水は蒸発するときに熱を奪います。表面に留まる水の量がそのまま、奪われる熱の量に比例してくるので、生地があるとそのぶん含まれる水の量が増えてしまいます。インストラクターは潜ったり出たりが頻繁で、休憩時間もスーツが脱げないという環境が多いため、陸上での熱の損失を少しでも防ぐために、スキンを選んでいるのではないでしょうか。

ただ、スキンは色を選ぶことができず、ゴムの黒い色になってしまいます。なるべく水を含まないゴムの部分を多くしたいものの、擦れる部分などは生地で強化したいし、なおかつデザイン的にもかっこいいorかわいいスーツにしたい、といったさまざまな要望を満たすために、《モビーズ》の「マキシマム」のように、主要な部分はゴムのまま(スキン)にしつつも、強度が必要な部分にはジャージを貼ってデザイン的にも工夫できるスーツも人気があります。

また最近では、スキンの「気化熱損失が少ない」というメリットは維持しつつ、耐久性も兼ね備えるために、ゴムに一度薄い生地を貼った後にコーティングをして生地の中に水を含まないように加工したものも出てきています。縫うことができるし、生地が貼ってあるので摩擦にも強い、夢のような素材で「ストレッチラジアル」とか「ソフトラジアル」と呼ばれています。「ラジアル」はドライスーツではかなり前から使われていた素材ですが、とても硬いのが難点でした。今では柔らかい「ソフトラジアル」や、それを超える「ストレッチラジアル」、「ウルトラソフトラジアル」といった、柔らかくて伸びるラジアルが登場し、高い注目を集めています。唯一デメリットを挙げるとすれば、加工の手間がかかるので、素材として高額なものになるということでしょうか。


光沢があり発色のきれいなライクラなどの生地は、デザインにも工夫ができるのがメリット。様々な柄や模様を選ぶことができます。

前回と今回の2回にわたって紹介したように、素材選びのポイントとしては「ゴム」、「表面の生地」、「裏面の生地」の3つがあり、その組み合わせによって最終形が決まってきます。つまり、「ゴム」×「表面の生地」×「裏面の生地」×「メーカー数」だけスーツの種類はあり、非常に多くの選択肢が用意されているということ。まずは素材の特徴をしっかりと理解して、自分に最適なウエットスーツ選びの第一歩を踏み出しましょう!

⇒次回は「タイプ別 ウエットスーツのベストチョイス」をお届けします。

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