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〜第2回 医学的に見たエンリッチド・エアのメリット〜

文/山見信夫(医療法人信愛会山見医院副院長・医学博士)

はじめに

ダイビング器材は時代とともに安全で便利になってきました。30年以上前はハーネスで潜っていた時代もありましたが、今はBCを着用して潜るのが常識になっています。ダイビングスーツも状況に応じてウェットやドライを使い分けるようになりました。水中で使用するエアも安全に進歩することが望ましいと考えます。

これまで日本では、エンリッチド・エア・タンクの普及が進まなかったことから、一部のダイバーしかその恩恵に与ることができませんでした。しかし最近、エンリッチド・エアを効率的に製造できる「メンブレンシステム」が導入され、タンクの供給が進みつつあります。エンリッチド・エアの安全性とメリットが高いことは医学的には既にコンセンサスが得られています。近い将来、エンリッチド・エアがレクリエーショナルダイビングのスタンダード・エアになることを期待しています。

エンリッチド・エアが体に及ぼす影響

phエンリッチド・エアは窒素の割合が少ないため、ダイビング中、体に溜まる窒素量を減らすことができます。そのため、減圧症にかかりにくくなります。一方、酸素濃度が高いことから、酸素中毒*1は浅い深度から生じやすくなります。窒素酔いについては窒素濃度が低い分、分圧換算上は罹りにくくなりますが、酸素がいくらか酔いに影響します。

レクリエーショナルダイビングで使われるエンリッチド・エアには酸素濃度32%と36%があります。計算上の窒素酔いは、空気、エンリッチド・エア32、エンリッチド・エア36で、それぞれ水深31m、37m、40mとなります(表1)。ただし、実際のダイビングではエンリッチド・エアを使用したとしても酸素酔いの影響等を考慮しなければいけないため、いずれのエアを使用した場合も安全限界水深は30mとします。一方、酸素中毒が発生する安全限界水深は、それぞれ水深57m、34m、29mになります(表1)。

*1 酸素中毒には脳と肺の症状があります。脳の症状は急性酸素中毒として現れ、肺の症状は慢性酸素中毒として現れます。水中で気をつけなければいけないのは脳の酸素中毒です。症状には、けいれん、視野が狭くなる、めまいがする、耳の聞こえがおかしくなる、意識を失うなどがあります。酸素中毒は、陸上で発生してもほとんど死亡することはありませんが、水中で発症すると溺死の原因になります。エンリッチド・エア・ダイビングでは酸素中毒を絶対に起こさない潜水計画を立てることが重要です。

■表1/窒素酔い、または酸素中毒が発症する可能性のある分圧換算上の深度(安全限界水深)

  窒素酔い 酸素中毒
空気(酸素21%、窒素79%) 31m 57m
エンリッチド・エア32 37m 34m
エンリッチド・エア36 40m 29m

エンリッチド・エアの安全性

エンリッチド・エアの安全性は古くから検討されてきました。多くの研究データから、安全に潜るための具体的な深度や潜水時間が明確にされており、決められたルールを守ればレクリエーショナルダイバーも安全に使用することができます。

多くの皆さんが気にされるのは、「高濃度酸素を吸って活性酸素が増えても害はないのか?」ということだと思います。 それに対する回答として、活性酸素に着目した安全性評価試験をひとつ紹介しておきましょう。この研究は、PADIダイバーにも協力してもらい、伊豆の海で行なったフィールド実験です。

酸素には善玉酸素と悪玉酸素があります。善玉酸素は人が生きていくために不可欠な酸素で、体のあらゆる組織で消費され、二酸化炭素として体外に排出されます。一方、悪玉酸素は活性酸素といわれ、細胞を傷つける性質があり、がんや生活習慣病を始めとして、ダイビングでは酸素中毒の原因として知られています*2。この活性酸素について、ダイバーに酸素濃度の違ったガスを使用してもらい、ダイビング前・後で血中レベルを測定しました*3

結果は、通常の空気タンクを使ったダイビングでは、水中で心拍数の低かったダイバーは活性酸素が減少し、心拍数の高かったダイバーでは増加していました。運動量が多いダイバーや緊張するダイバーに活性酸素が増加する傾向があるのです。一方、エンリッチド・エアを吸ったダイバーでは、水中で激しい運動をしなくても上昇する傾向がありました。ただ、これらの値は個人レベルでは高くなりましたが、一般的な健常者の基準値を上回るものではありませんでした。上昇した程度は、陸上で少し激しいジョギングをした後の値に相当し、翌日、測定すると元のレベルに戻っていました。

この結果が意味することは、エンリッチド・エアを使うと、活性酸素は上がるものの体に悪影響を及ぼすほどではないこと、上昇したレベルはジョギングをした時と同じ程度であり安全であるということです。このような実験が多方面から行なわれ、エンリッチド・エアの安全性が確立されました。

*2 活性酸素は悪玉扱いされがちですが、病原菌を殺す役割もあるため、実際には善玉同様、ある程度体の中にはなくてはならない酸素です。呼吸で取り入れた酸素の2〜5%は活性酸素になるため、酸素濃度の高いエアを吸うと活性酸素は増加する傾向があります。

*3 活性酸素はすぐに形を変えてしまうため、実際に測定したのは代謝過程で生じるヒドロペルオキシドという物質です。

エンリッチド・エアのメリット

エンリッチド・エアには、医学的メリットとダイビングプラン上のメリットがあります。医学的なメリットは、「空気と同じ深度に同じ時間潜るのであれば、残留窒素が少なくなるため減圧症に罹りにくくなる」ということです。プランニング上のメリットは、「空気と同じ減圧症リスクを許容するのであれば、減圧停止不要潜水時間が伸びる」ということになります(表2)。

空気用の減圧表を使用したダイビングはそもそも減圧症発症率が低いため、エンリッチド・エアを使えば直ちに発症率が下がるというわけではありません。しかし、水深30m程度の比較的深いダイビングでは、空気を使って潜ったダイバーよりエンリッチド・エアを使用したダイバーのほうが減圧症になる率が少ない傾向があります。

■表2/米国海軍標準空気減圧表に基づいたエンリッチド・エア32(EAN32)の
    空気相当換算水深および減圧停止を必要としない潜水時間

標準空気減圧表

EAN32における空気相当換算表
深度(m) 減圧停止不要潜水時間(分) 空気相当換算深度(m) 減圧停止不要潜水時間(分)
3.0 制限なし 1.2 制限なし
4.6 制限なし 2.6 制限なし
6.1 制限なし 3.9 制限なし
7.6 595 5.1 制限なし
9.1 405 6.4 595
10.7 310 7.8 405
12.2 200 9.1 405
15.2 100 11.7 200
18.2 60 14.3 100
21.3 50 16.9 60
24.4 40 19.6 50
27.4 30 22.2 40
30.5 25 24.9 30
33.5 20 27.4 30
36.6 15 30.1 25
39.6 10 32.7 20
42.7 10 35.4 15
45.7 5 37.9 10
48.8 5 40.6 10
51.8 5 43.2 5
54.8 5 45.8 5
59.9 5 50.2 5

次回は、減圧症との関係について解説します。


筆者プロフィ−ル

ph山見信夫(やまみ のぶお)
医療法人信愛会山見医院副院長、医学博士。
宮崎県日南市生まれ。杏林大学医学部卒業。 宮崎医科大学附属病院、東京医科歯科大学大学院健康教育学准教授(医学部附属病院高気圧治療部准教授併任)等を経て現職。
日本高気圧環境潜水医学会理事・評議員・専門医 
日本小児科学会専門医、日本臨床内科医会専門医、日本プライマリケア学会指導医、日本体育協会スポーツドクター、日本医師会認定健康スポーツ医、日本医師会認定産業医
海上保安庁や警視庁の潜水訓練においても、長年、講師を務めてきたダイビング歴30年、インストラクター歴26年のダイバー。
月刊マリンダイビングと月刊ダイバーに連載中。
◆ドクター山見公式ウェブサイト:http://www.divingmedicine.jp/


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