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〜第5回 エンリッチド・エアの製造〜

文/西山 徹(株式会社ACCESS代表取締役)

最近よく耳にする「メンブレン」とは?

ph01最近、日本各地で急速に普及しつつあるエンリッチド・エア(ナイトロックス)。そんな中で皆さんも「メンブレン」という言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか。

これまでの日本では、エンリッチド・エアの製造は「分圧混合方式」(空気と純酸素または窒素をブレンドする方式)が主流でしたが、純酸素を使用する点でさまざまな法律の規制や取り扱いの危険性、タンク1本への充填に多数の工程を要するなどの問題点がありました。

この問題点を解決したのが、弊社が開発した「CORE」をはじめとする「メンブレン方式」によるエンリッチド・エアの製造です。今後の日本のエンリッチド・エア製造の主流になるであろう、この方式の仕組みについて、今回は説明させていただきます。

では「メンブレン」とはいったい何でしょうか。実はメンブレンとは「膜」を意味する言葉で、インターネットで「メンブレン」と検索すると、「メンブレン式キーボード」や「汚水の浄化システム」などが大半を占めています。ですので厳密にいうと、エンリッチド・エアを製造するメンブレンは、「ガス分離モジュール」というのが正しい表現となります。

この「ガス分離モジュール」を用いたエンリッチド・エア製造の仕組みについて説明しましょう。

通常、大気(空気)は約78%の窒素、約21%の酸素、その他の気体(二酸化炭素など)1%で構成されます。それぞれの気体は、ある物質に対して「その物質をどのくらい通り抜けやすいか」という性質の違いがあります(これを「透過速度」と言います)。「ガス分離モジュール」を用いたエンリッチド・エア製造では、この各気体の「透過速度」の違いを利用し、空気を「酸素富化気体」と「窒素富化気体」に分離するのです。

簡単な仕組みを説明しますと、メンブレン・ガス分離モジュールには無数の小さなストロー状の中空糸が詰まっています。この中空糸は特殊な材質で、窒素よりもより多くの酸素を通します(透過速度 酸素>窒素)。この中空糸の一方に空気を高圧で押し当てます。押し当てられた空気は中空糸を通り抜けますが、そのとき酸素は窒素よりもこの中空糸をより透過しやすいため中空糸壁を通り抜け、通り抜けることができなかった窒素は反対側から出て行きます。これにより空気を「酸素富化気体」と「窒素富化気体」に分離することができます。

図

この中空糸に高圧をかけて分離する方法では"完全に"空気を「酸素」と「窒素」に分離することはできません(完全に分離したい場合には全く別の方法を用います)。そのため、中空糸を透過した気体は「酸素富化気体(空気から一部の窒素が抜けた酸素)」、中空糸を通り抜けられなかった気体は「窒素富化気体(空気から一部の酸素が抜けた窒素)」という表現をします。

完全に空気を分離することができないので、この方式では100%の酸素を取り出すことはできません。取り出した「酸素富化気体」の酸素濃度は、最大でも40%です。しかし、ダイビングにおいては「酸素濃度40%」が現実的な上限となることから、ダイビングで使用するエンリッチドエアの製造にはこの「分離方式」がぴったりなのです。

前述したように従来のエンリッチド・エアは100%の酸素を用いて「分圧混合方式」により製造していましたが、100%の酸素を用いることは安全面においても、またコスト面においてもクリアすべき問題が多く、日本国内でのエンリッチド・エアの普及に大きな足かせとなっていました。その点、このメンブレンを用いた分離方式では原材料が「大気(空気)」であるため、安全面・コスト面でのハードルを軽々とクリアすることができます。

ph02そのほかの特徴としては
・メンテナンスさえ行なえば、半永久的に使用可能
・高濃度の酸素が発生しないため、コンプレッサーの完全オイルレス化が不要で、作業中の危険性も低い
・多くの既存のコンプレッサーとの接続が可能で、一台のコンプレッサーで、空気とエンリッチド・エアの充填を行なうこともできる
・タンク充填も今までの空気の充填と作業工程は変わらず、また、希望の酸素濃度も個別に簡単に設定が可能

このように、誰でも間単にエンリッチド・エアが製造できる設備なのです。

今後は、この方式の更なる普及によって、エンリッチド・エアがどこの海でも手軽に利用できるようになることを期待しています。


筆者プロフィ−ル

西山 徹(にしやま とおる)

福岡県大牟田市で《SCUBA DIVING PRO SHOP AQUA》を2003年より経営しつつ、エンリッチド・エア製造を目指し、《株式会社ACCESS》を立ち上げる。メンブレン方式のエンリッチド・エア製造装置「CORE」を開発し、同システムを日本各地で精力的に普及させつつある。現在では熊本県、宮崎県、鹿児島県、高知県、沖縄県、愛知県ですでに導入されており、今後もさらなる活躍が期待される(メンブレン方式は東京都、山形県でも認可されています)。
お問い合わせは…ホームページEメール


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