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海の遺跡

#06 周知・理解と活用のために(I) 〜アジア水中考古学研究所の取り組み〜

日本の水中文化遺産およびその研究(水中考古学)を取り巻く環境は、これまでの連載コラムでも触れてきたように、決して良い状況ではありませんが、近年、少しずつですが、各方面で研究や周知・理解のための取り組みがなされるようになってきました。私の所属する《特定非営利活動法人アジア水中考古学研究所(以下、ARIUA)》も、この問題に取り組んでいる組織のひとつです。今回は、ARIUAの取り組みについて紹介をさせていただきます。

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坊津海底遺跡(鹿児島県南さつま市)潜水調査の様子 2008年11月調査 山本祐司撮影

ARIUAは、1986(昭和 61)年に任意団体として設立され、2005(平成17)年にNPO法人化した、福岡県福岡市に本部を置く民間学術団体です。会員は約150名で、研究者・行政担当者・ダイバーなど多岐に及びます。これまで、主に九州で水中文化遺産調査に携わり、その成果を学術的に評価・公表するとともに、会報・学会誌の刊行、報告会やシンポジウムの開催を通して、研究者のみならず、広く一般の方々への水中文化遺産周知に努めてきました。

NPO法人化以後は、活動の場を全国に広げ、とくに水中文化遺産の周知・理解とその活用に力を入れてきました。その活動の一環として、2007(平成19)年には、一般向けの海底遺跡見学会を長崎県・五島列島にある小値賀町・小値賀島前方湾海底遺跡(おぢかじままえがたわんかいていいせき)で行ない、2009(平成20)年から2011(平成22)年にかけては、「水中文化遺産データーベース作成と水中考古学の推進を目的」とした日本全国を対象とする「海の文化遺産総合調査プロジェクト」(以下、プロジェクト)を展開しました(いずれも日本財団助成事業)。いずれの事業も、陸上の遺跡では当たり前のように行なわれてきたことでしたが、水中文化遺産対象では、これまで実施されたことがありませんでした。

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小値賀島前方湾海底遺跡(長崎県小値賀町)
見学会の様子[潜水見学コース]
2007年8月実施
山本祐司撮影

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小値賀島前方湾海底遺跡(長崎県小値賀町)
見学会の様子[船上見学コース]
2007年8月実施
アジア水中考古学研究所提供

プロジェクトでは、これまで詳細が不明であった遺跡の状況が明らかとなり、新たに発見された遺跡も多数あるなど、多くの成果を得ることができました。その成果は福岡・那覇・東京で開催した報告会で発表し、また、並行して開催した見学会(久米島)と展覧会(東京)では、活用の実践と実物資料を通して水中文化遺産を多くの方により正しく理解してもらえるよう努めました。

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『海の文化遺産総合調査報告書』(5分冊)と『全国水中遺跡地図』
アジア水中考古学研究所提供

プロジェクトの成果は、調査報告と論考から成る『海の文化遺産総合調査報告書』(海域別に5分冊。以下『報告書』)とデーターベースである『全国水中遺跡地図』(以下、『遺跡地図』)にまとめ刊行しました。『遺跡地図』には、行政の「埋蔵文化財包蔵地台帳」と同じレベルで取捨選択した270余の「周知の遺跡」として登録されるべき水中文化遺産を掲載しました。

プロジェクトには、大学やほかの民間研究機関、行政、ダイバー、漁業従事者など多方面からの協力をいただきました。しかし、限られた期間と予算、限られたマンパワーで実施した事業ですから、国内の水中文化遺産を網羅できたものではなく、データベースとしては不十分なものです。しかし、十分な基礎的データがなかった状況を考えれば、実地調査に基づいたデータベースを作ったこと自体、大きな成果であったと思いますし、ようやく陸上の遺跡と同じ土俵に立てる下地ができたと言えるのではないでしょうか。助成事業としてのプロジェクトは終了しましたが、より十分なものを目指し、データ収集・集約は続けています。その点からもプロジェクト自体はまだ進行形なのです。

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三戸浜海岸に残された江戸城石垣用の石材(神奈川県三浦市)
[近世] 2011年1月調査
アジア水中考古学研究所提供

そして『遺跡地図』に記した「遺跡」の大半は、「埋蔵文化財包蔵地台帳」に登録されていません。しかも『遺跡地図』自体に行政的な効力もありませんので、今後は、さらなる調査を通して「遺跡」の詳細内容を確認するとともに、遺跡保護のためにも行政に対して「周知化」に向けて働きかけをしていくつもりです。

『報告書』と『遺跡地図』は、より多くの方に閲覧していだけるよう現在、研究所のホームページで準備中です。ホームページでは、報告会・見学会・展覧会の資料を公開しており、また、ブログとともに、ARIUAの活動内容や調査成果および関連情報について、随時紹介もしていますので、ぜひご覧になってみてください。

ARIUAが携わってきた一連の取り組み終了を待つかのようなタイミングで、2012(平成24)年3月に「鷹島海底遺跡」が「水中遺跡」としては初の国史跡に指定されました。この指定は文化遺産(文化財)として無視されることさえあった水中文化遺産にとっては、非常にインパクトのあることで、周知や理解には大きな弾みともなりました。実際にこれまでの鈍重な動きがうそのように、多方面で水中文化遺産を巡る動きがここ数年で多く見られるようになりました。次回は、この多方面での動きについてお話したいと思います。

ARIUA

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