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磯は生き物のパラダイス

第1回 干潟はワンダーランド

サンゴ礁、磯、砂浜、干潟などなど・・・
それぞれの場所に適応した生き物を知ることは、海への深い理解につながります。
まず最初の回は、内湾の干潟を歩いてみましょう。
潮干狩り以外ではあまり注目されないせいか、あんがい知らない生き物がたくさん見られます。

アナジャコ 1. 筆を使ってアナジャコ観察
泥のよく混じった干潟には、直径が10円〜500円玉くらいの穴がたくさん開いていることがあります。これがアナジャコの住みかです。
しかしスコップでいくら掘り出そうとしても、彼らはあっという間に1メートル以上の深さまで潜ってしまいます。
そこでアナジャコの姿を見るためには、巣穴に使い古した筆を立てます。すると彼らは、それを邪魔者として穴から押し出そうとするのです。そうしたらシメたもの。筆を微妙に動かして、アナジャコをできるだけ外までおびき出し、エイヤっと両方のハサミ脚を押さえ(不完全なハサミなので、あまりはさまれることはありません)、素早く体を掘り出すのです。
ほら、やってみたくなったでしょ。

アラロムシ 2. 地中から這い出るおそうじ軍団
平な干潟にもわすかな凹凸があって、水たまりができていることがあります。
ケフサイソガニやマハゼなどが潜んでいることも多いのですが、そんな場所があったら現場調達した魚の死体などを放り込んでおきましょう。
すると、どこからともなくゾンビが・・・。いやいや、砂泥の中から姿を現すのは、全長1センチあまりの小さな巻貝「アラロムシ」でした。
殻の後ろ端から出した長い水管を振りながらたくさん集まってきます。
ゾンビどころか、海の大事な掃除人なのです。

チゴガニ 3. ダンスの名手は、やっぱりチゴガニ
干潟を形成する川の流れ込み付近では、川の両岸やアシ原を歩いてみましょう。潮が引くと、いろいろなカニが姿を現わします。
「ヤマトオサガニ」は長い目と曲がったハサミ脚がカッコいいですし、「コメツキガ二」は巣穴の周りに砂粒で絵を描きます。
でも、見てて一番おもしろいのは、ダンスの名人「チゴガニ」かな。
淡いブルーの体の前で、白いハサミをピョコン、ピョコンと振るようすは見ていて飽きません。しだいにハサミを振るカニの数は増え、最後にはマスゲームみたいになります。

ツメタガイ 4. なんじゃこりゃ、その1 砂ぢゃわん
干潟の上にこれがあると、知らない人はけっこう驚きます。
「ツメタガイ」という巻貝の卵塊なのですが、これがなかなか味わい深い。
その精緻(せいち)な練り上げ方には、芸術作品の香りすら漂っています。ちょっと背の高いものもあれば、お皿に近いものもあるし、縁がフリル状になっていたりもします。きれいに丸く一周しているもの(一周しても完全な円になることはないのですが)をいつも探すのですが、なかなか見つからないのです。

イダテンギンポ 5. なんでそんなとこにいるの?
完全に潮が引いてしまった干潟でしか見られない?すごい魚を紹介します。
その名は「イダテンギンポ」。
例えば、干潟に飛び出した岩や、干潟に沿った岸壁には、カキやムラサキガイなどの殻がいっぱい付着しています。それを丹念に見ていくと、死んだ殻には水がちょこっと溜まっていたりします。その中になんとこの魚が丸まって、じっとしていることがあるんです。
真夏など、干潮時には相当厳しい環境になるのではと想像するのですが、彼らはそこで耐え抜いているようです。
すごいでしょ。

タマシギゴカイ 6. なんじゃこりゃ、その2 謎のてんこ盛り
春になって干潟を歩いていると、しばしば目にするのが、砂の上に残された謎のてんこ盛り。 最近読んだ干潟観察の本では、「砂のモンブランケーキ」と書かれていました。言いえて妙。
でもこれ、「タマシギゴカイ」の糞なんです。
干潟の有機物を食べてくれる掃除人のひとり。だから本当のことを言うと、他の泥よりも糞のほうがきれいなんです!
そしてこの糞の近くには、生卵の白身みたいなものが落ちていることもあります。
こちらはタマシギゴカイの卵塊です。蹴飛ばさないようにご注意を。

ジミー 7. 砂に咲く、ジミーな花
"シーアネモネ"というと可憐なイメージを抱いてしまいますが、干潟にすむイソギンチャクは超地味系。
「クロガネイソギンチャク」も「ニンジンイソギンチャク」も、砂の表面ギリギリのところで触手を広げ、口の上に砂が積もったりしていることも多いので、どうやってあれを払うんだろうと心配になったりもします。
しかも体を支えるもののない干潟では、深さ30センチくらいのところにある貝殻や小石に付着して、せいいっぱい体を伸ばしているんです。
健気ですね。


三宅直人 三宅 直人
1954年岡山県生まれ。アクアリウム雑誌の編集者を経てフリーに。
『BE-PAL』誌に「図鑑の庭」、『アクアライフ』誌に「アクアリウム歴史読本」などを執筆。
『緑・花試験集中講義』などの著書がある。

友永たろ 友永 たろ
イラストレーター。主に キャラクター製作、児童書イラストを描く。
魚や水生生物が大好きで、独特のタッチで描かれる魚たちのイラストはいろいろなところで目にかかることも多い。
最近ではFlashでムービー作成にはまっている。
ホームページ「ぼくのすいぞくかん(http://boku-sui.net)でイラスト&Flashムービー公開中。


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