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ダイビング中によく見かけるおサカナがより身近に感じられる雑学を
ちょっと変わった視点からお届けします。

 文:西川 守(PADIジャパン/大阪オフィス)   イラスト:ともなが たろ

第3回 クエ/ハタの仲間(前編)

ph01クエは、実は私の一番大好きなおサカナです(もちろん、潜って観察する対象としてですよ!)。

とはいえ、クエは近年のグルメブームですっかり有名なおサカナになってしまいました。その分、市場価格もうなぎのぼりで、2010年の年末には大阪のデパートでキロ当たり3万5千円というお値段を見かけました(いつも値段をチェックしてる自分もどうかしてますが。。。)。30キロ近い魚体でしたから、一尾で100万円近い"幻の魚"になってしまったようです。

九州の「アラ」、関西の「クエ」、関東の「モロコ」と、すべて同じおサカナのことですが、ダイビングでは案外身近に見かけると思います。各地のダイビングスポットでアイドルのように扱われていますよね。そのくせ、冬場のダイビングショップでは「クエ鍋ツアー」が人気です。つまり、ダイバーの間でも、"見る"対象としても、"グルメ"の対象としても人気モノの珍しいおサカナなのです、、、ということであれば私としても好都合なのですが・・・(ちなみに自分はエンガワとクチビルが大好きです)。

今回と次回で、クエを中心にハタの仲間にまつわる雑学を紹介します。

まず、なぜ、幻のおサカナなのにダイバーは簡単に出会えるのでしょうか。 もともとハタ類は岩穴を棲家としており、すぐに穴にもぐりこんでしまうので、漁獲は難しい仲間です。 そんな中で、実はクエが一番浅瀬に対応しており、ダイバーの潜る深度とかぶるのです。ほんの水深数メートルの岩穴に一時期の日本記録魚が潜んでいた例もあります。

ここで、クエを含むハタの仲間を観察する時に覚えておくと楽しめる、2つの特徴を確認しておきましょう。

ポイントは「胸ビレの動き」と「口のカタチ」です。 ハタはほとんどが夜行性のサカナとされていて、昼間は岩穴にひそんでいることが多いようです。ダイビング中に我々と遭遇すると、よく穴に逃げ込んでしまいます。このあとの行動が胸ビレの動きに現れていて、普段から左右非対称に「スカーリング」をしていることが多いです。つまり、頭から飛び込んだ狭い岩穴の中で方向転換する際に胸ビレを器用に使っているようです。

さらに、フィッシュイーターなので、岩穴から斜め上方に餌を捕食しやすいように下アゴが突出しています。どうですか、この2つの特徴は、今度ハタの仲間を見かけたら確認してみてください。ちなみに、同じところにいても、甲殻類などが好きで押さえ込むように捕食するカサゴは、上アゴが突出しています。

ph02クエと他のハタとの見分け方は、茶色で斑点がなく、横縞(イシダイと同じで、タテではありません)のある仲間で、その縞の前2本が頭のほうに流れていると正真正銘のクエです。 この「正真正銘」というのが悲しい話で、実は顔の周りに斑点のあるニセモノを、最近見かけるようになっています。

もともとクエは人口種苗(稚魚)の生産が難しく、養殖に向いていませんでした。そこで、近似種のヤイトハタ(体じゅう斑点のあるハタ)とかけ合わせてF1を作り、「クエハタ」として養殖が始められました。こいつの顔には少しですが斑点があります。

このクエハタは、比較的安価な「クエ」として出荷されたほか、西日本で近年流行している海上釣り堀にも出荷されました。海上釣り堀とは、文字通り海に浮かべたイケスの中に養殖のマダイやブリ、カンパチ、その他定置網に入った天然魚などを放流し、釣り客に釣らせる遊魚施設です。利用者からは、クエハタは宝くじのような存在として扱われています。 これらのクエハタは当然厳重に管理されていると思いたいのですが、なぜか、最近顔に斑点のあるクエを海でときどき見かけるのです。 F1には繁殖能力がなく、F1を放流することは本来の種を撲滅させる手段とも聞いているのですが。。。 さすがに最近では完全な人工種苗を使ったクエの養殖も成功しているので、せめて、人の手で作るなら、逃げても大丈夫な本物のクエにしていただきたいものです。

次回はクエ以外のハタについてお話します。


筆者/西川 守

PADIジャパン/大阪オフィスのスタッフ。
とにかく魚が大好きで、いつもダイバー、釣師、魚屋さん、料理人のそれぞれの視点で魚を観察できる。 おかげで、いわゆるレアものより普通の温帯にいる魚が得意。 大の魚好きなことが高じて、オリジナルのPADIスペシャルティ「サカナとの遊び方SP」を作ってしまう。これまでに、白崎海洋公園、串本、越前、牟岐、大分、佐世保、上五島で、この「サカナとの遊び方SP」のイベントを開催。TVチャンピオン(テレビ東京系/現在は放送を終了)でお刺身を食べて魚種を当てるさかなクンを見て感動するが、いつの間にかそれが自分の得意技にもなってしまう。「生まれ変わったら伊豆大島の波浮港の水底で、つぶらな緑色のひとみで 仲間とひしめき合って水面を見上げているハオコゼになりたい」と常々思っている。


友永たろイラスト/友永 たろ

イラストレーター。主に キャラクター製作、児童書イラストを描く。
魚や水生生物が大好きで、独特のタッチで描かれる魚たちのイラストはいろいろなところで目にかかることも多い。
最近ではFlashでムービー作成にはまっている。
ホームページ「ぼくのすいぞくかん(http://boku-sui.net)でイラスト&Flashムービー公開中。


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