ダイビング雑誌でも毎回のように登場するパラオの海。もう長いこと世界のダイビングスポットの頂点の1つとして人気を維持し続けている恐るべき海だ。僕はこれまでいろいろな国に行って、アメリカやヨーロッパ、アジアなど様々な地域から来ているダイバーたちと話をする機会があったけれども、ほとんどの人が「パラオに行ってみたい」と僕に熱く語った。そして「日本はパラオに近くていいなあ。」と羨んだ。
パラオの海に初めて潜ったのは、1987年ごろだったろうか。今はなきダイビング雑誌『ダイビングワールド』の専属カメラマンだった僕は、当時まだ日本ではそんなに知られていなかったパラオに取材に出かけ、1週間ほど滞在して毎日潜りまくり、帰国後30ページ近い大きな巻頭特集を組んだのだった。特集は好評で、それを契機にパラオ人気が沸騰してきたという話を後に聞いた。というわけで、パラオは僕にとってちょっと思い入れのある場所なのだ。
パラオを代表するポイントに「ブルーコーナー」というところがある。潮当たりが良く、魚影がとても濃いポイントだ。ここに初めて潜ったときは本当に驚いた。魚の群れがあっちでもこっちでも渦を巻いていて、流れに乗って移動していくにつれ、バラクーダの渦、ギンガメアジの渦、他の大小のアジたちの巨大な渦群、チョウチョウウオの可憐な渦と、まるでディズニーランドのアトラクションのように、次々とそんな渦に遭遇していくのだ。そしてそのまわりには、多数のサメや巨大アジや、ナポレオンたちがウロウロしていて、「ゴー」という轟音とともにその群れに突っ込んで行く。すると渦が一瞬にして形を変える・・・。海の野性味をこの時ほど感じたことはなかった。
パラオの美しいビーチで、水着のモデルさんを撮影したときのこと。 中腰になってモデルさんと一緒にビーチを走りながら撮影していた。ビーチは真っ白で美しく、モデルさんも美しく眩しい。ついつい夢中になって撮影していたら、急に僕の腰に激痛が走り、その場で砕け落ちてしまった。ぎっくり腰だ。 その次の日からは、部屋からカートで運ばれ、ウエットスーツを着せられ、ボートから突き落とされて水中撮影する、という日々となった・・・。
何十年も世界中のダイバーが、毎日毎日通い続けるパラオ。魚が減ったとか、群れが小さくなったとか、いろいろ言われはするけれども、それでもいまだに素晴らしいポイントであり続けている。ダイバーが多いぐらいじゃビクともしないほど、パラオの海は野生そのもので、パワフルなのだろう。
高砂淳二プロフィ-ル
たかさご じゅんじ。自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。 ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て1989年に独立。 海の中から生き物、風景まで、地球全体をフィールドに、自然全体の繋がりや人とのかかわり合いなどをテーマに撮影活動を行っている。 著書は、月の光で現れる虹を捉えたハワイの写真集「night rainbow ~祝福の虹」(小学館)をはじめ、「虹の星」、「free」、「BLUE」、「life」(ともに小学館)、「ハワイの50の宝物」(二見書房)、「クジラの見る夢 ~ジャックマイヨールとの海の日々~」(七賢出版)、「南の夢の海へ」(PIE BOOKS)など多数。 2011年5月には、ハワイの写真集「Children of the Rainbow」(小学館)が発売された。 「太平洋島サミット記念写真展"PACIFFIC ISLANDS"(コニカミノルタ・プラザ)」 、ザルツブルグ博物館、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。
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